40 最終決戦

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「……ちょっと待ってろ」  聖夜は自分のマントを少し破り、少年の腕に巻き付けて止血した。 「……これでよし。でも、後でちゃんと手当てしてもらうんだぞ」 「……ありがとう。お兄さん」  少年は涙を堪えて微笑んだ。しかし、その笑顔は一瞬で崩れる。 「お兄さん、後ろ!」  少年の声で振り返ると、狼がこちらへ向かって飛びついていた。 「くっ……!」  聖夜は咄嗟に2人を庇うように抱き締めた。攻撃を受けるのを覚悟して目を瞑った、その瞬間。 「聖夜!!」  誰かが、聖夜と狼の間に割って入った。声に振り向くと、そこには司の姿があった。 「司!危ない……!」  そう言うやいなや、司の腕に狼の牙がめり込む。 「司!!」 「聖夜、大丈夫……見てて」  司はそう言って目を閉じた。すると、司の周りにオーラが溢れる。 「『カウンター』!!」  司が叫んだ瞬間、エネルギーが放出され、狼が塵となり消えていった。 「すごい……」 「へへ……僕も聖夜に負けないくらい戦ってきたんだから!」  司はそう言って得意気に笑うと、膝をついて少年と少女に目線を合わせた。 「君達、大丈夫?お名前言える?」 「……僕、牙崎優希(きばさきゆうき)」 「私、黄島閃里(きじませんり)!」 「分かった……取り敢えず僕が警察で2人を保護するよ。家族が探してるかもしれない」 「いいのか……?」 「うん。聖夜は他に、やることがあるんだよね?」 「……ああ。俺、止めなきゃいけない人がいるんだ」  聖夜はそう言うと、中学校の上空にある闇の城を見上げた。その様子を見て司は微笑み、握った拳を差し出した。 「聖夜なら大丈夫。頑張って!」 「司……うん!」  聖夜も拳を握り、司とグータッチした。 「お互い頑張ろうな!」  聖夜はそう言って、仲間が向かった中学校への道を駆け出した。
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