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聖夜が目を開けると、そこは医務室だった。身体を起こして、ふうと息を吐く。睡眠をとったことによって任務の疲れもとれたのか、全身が軽い。もう大丈夫そうだなと思い、聖夜はベッドから降りた。そして、清野に軽く挨拶をし医務室を後にすると、廊下で真崎とばったり鉢合わせた。
「あ、真崎さん」
「聖夜君!怪我はもう平気?」
心配そうに尋ねる真崎に、聖夜は笑顔で頷く。
「うん。清野さんに治してもらったから!」
「そっか、よかった……」
真崎は安心した顔で胸をなで下ろす。しかし、顔色が優れない。心配になった聖夜は、真崎に尋ねた。
「真崎さんこそ、大丈夫ですか?」
聖夜の言葉に対して、真崎は苦笑いする。
「琴森さんにオペレーションの基礎をもう一回叩き込まれちゃったんだ。ごめんね、不甲斐なくて」
「そんなことないですよ。俺も任務ではヘマしちゃったし……」
「そんな、あれは私のミスで……」
何度もお互いを庇い合いながら、2人は笑った。
「これじゃ埒が明かないね」
「あはは!ほんとだ。……そういえばさ、真崎さんは、どうして特部でオペレーターをやろうと思ったんですか?」
「私?」
聖夜が頷いたのを見て、真崎は真面目な顔になって答える。
「弟の苦悩を、少しでも分かってあげたくて」
「弟?」
「そう。……私の弟、特部だったんだ。すごく明るくて、正義感も強かったの。でもある日、大怪我をして半身不随になって帰ってきて……それ以来、弟はずっと塞ぎ込んでいて」
「そんな……」
「特部で働いたら、弟の気持ちが分かる気がしたんだ。私は、弟が見てた世界を何も知らないから、少しでもそれを知ることができたらって」
「そうだったんだ……」
聖夜の苦しそうな顔を見て、真崎は、無理やり笑顔を作って言った。
「まだまだだけど、頑張るからね」
絶対に、強くなる。オペレーターとして成長して、弟の世界に寄り添ってみせる。そんな決意の滲んだ笑顔を前にして、聖夜も力強く微笑んだ。
「俺もまだまだ戦いなれてないけど、いつか誰かを守れるようになる!だから、一緒に頑張りましょう!」
聖夜の言葉を聞いて、真崎はしっかりと頷いた。
「うん!」
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