40 最終決戦

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* * *  柊が目を覚ますと、中央支部医務室の白い天井が見えた。 「あ……私、寝てた……?」 「柊……」  名前を呼ばれて横を見ると、明日人が心配そうに柊を見つめていた。 「お父さん……聖夜達は……?」 「戦いに行っている。未来人が町を攻めてきたんだ」 「私も、行かなきゃ……」 「柊、無理をしたら駄目だ!」  体を起こそうとする柊を、明日人は止める。しかし、柊は構わずベッドから立ち上がった。 「……私、戦いたいの。最後まで、仲間のために……この世界に住む、誰かのために、戦い抜きたい」 「柊……」 「過去でね、お母さんと約束したんだ。この思いを、最後まで貫くって……だから私、行くね」  柊はそう言って医務室のドアを開けようとする。 「柊、待て!!」  明日人の意外な大声に、柊は立ち止まり振り返った。 「お父さん……」 「……母さんと約束したなら、父さんとも約束しなさい。必ず、生きて帰ってくると」  そう言う明日人の瞳は、少し潤んでいた。 「……うん」  柊はしっかりと頷き医務室を出て行こうとする。その時だった。 「……抜け出すつもりかな?」  ドアが開いて、清野が中に入ってきた。 「清野さん……私……」 「寝てなきゃ駄目じゃないか……と、言いたいところだけど」  清野は柊に錠剤を手渡した。 「これは……?」 「この前より強めの薬だよ。先日、薬局で補充しておいたんだ。君は止めても無駄だろうから」  清野はそう言って、諦めたような笑顔を見せる。 「清野さん……!」 「戦いに行く前に2錠飲みなさい。それと……今回の戦いが終わったら病院に行くこと。いいね?」 「はい!ありがとうございます!」  柊は頭を下げて、医務室から駆け出した。 「全く……頑張りすぎるのも考え物ですね」  清野が苦笑いすると、明日人は瞳に溜まった涙を拭って微笑んだ。 「はい……でも、自慢の娘です」 (柊……真っ直ぐ育ってくれてありがとう。生きて帰ってくるんだぞ……)
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