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「なっ……」
その時。
「行かせないわよ!『蔦』!」
花琳の蔦が、狼達を縛り上げた。
「聖夜君、行って!」
「花琳さん……!ありがとうございます!」
聖夜は黒い階段を一気に駆け上る。そして、城の入り口に辿り着いた。
(ノエル……絶対に、止めてみせる)
聖夜は意を決して城の扉を開けた。城の中は壁も床も黒く、全て闇でできていることが窺える。灯りは壁がけの青白いランプのみで、全体的に冷たい雰囲気を醸していた。
(なんて冷たい場所なんだ……それに、暗くて重い……)
重苦しい雰囲気に耐えながら聖夜は奥の部屋へ進む。その部屋に居たのは、玉座にゆったりと腰を掛けるノエルだった。
「ノエル……!」
「やぁ、聖夜。まさかここまで来るなんて……思ってもみなかったよ」
ノエルはそう言って冷たい微笑みを浮かべた。
「それで……何をしに来たのかな?」
「ノエルを……止めに来たんだ!」
「僕を止める?はは……面白い冗談だ」
ノエルは立ち上がり、聖夜を真っ直ぐに見据えると、言い放つ。
「僕は止まらないよ。この時代を支配するまで……僕は戦い続ける!」
ノエルはそう言って右手を高々と上げた。すると、空中に大きな黒い槍が現れた。
「君には……消えて貰う!!」
「……そうはいかない!俺は決めたんだ……この世界を守るって!」
「っ……消えろ!!」
ノエルが大槍を放とうとした、その時。
「うっ……」
右目が痛んで、聖夜は目を閉じた。すると、瞼の裏側に映ったのは……数秒後に飛んでくる大槍の軌道。
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