40 最終決戦

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「何だよ……今の……」 「……はは。懐かしい、夢だ……」  ノエルが目を覚まし、乾いた笑い声を出した。 「ノエル……!」 「今のは、僕の過去……。『闇』が、僕の思い出にリンクしたみたいだね……」 「そんな……こんなのって……」  聖夜の頬に、涙が伝う。それを、ノエルは 力無く睨んだ。 「なんだい……同情?そんなもの要らない。そんなことをする位なら、僕達の未来を……」 「ノエル!!」  聖夜は、ノエルを思い切り抱き締めた。 「な、何をするんだ!?」 「ノエル、ごめんな」  戸惑うノエルに、聖夜は自分の思いを語り始めた。 「俺達の時代が……積み重なった過去が、ノエル達の未来を壊したんだろ?」 「そうだよ……。だから、僕達は過去を……」 「変えるから」 「え……?」 「俺達、()を変えるから。それで、アビリティや戦争で、誰も傷つかない未来を作るって……約束するから」 「聖夜……」 「ノエル達の未来、俺達が守る。絶対……絶対、守ってみせるからっ……!」 「っ……!」  闇が徐々に晴れていく。闇の隙間から刺す光が2人を照らしていく。その光に照らされて、ノエルの頬に一筋の涙が光った。  不意に、彼の脳裏に、出会ったばかりの頃のツムギの言葉が蘇る。 『私のアビリティは『絆』。色んな人の縁を結びつける……みんなを笑顔にする力』  まだ13歳だった頃のツムギは、空腹で倒れていたところを助け出されたノエルが、ベッドに座っているのを見つめて、明るく笑っていた。 『きっと……この力のお陰で、私達も出会えたんだよ!』  その時のことを思い出し、ノエルの目から涙が堰を切って溢れ出した。 (アビリティは……人を笑顔にできるもの。そういえば、そんな側面もあったっけ。……なんで、今まで忘れていたんだろう)  ノエルの胸ポケットには、今も彼女の形見である向日葵の髪飾りが入っていた。 (ツムギ。君のアビリティが……僕を、心優しい聖夜のところまで、連れてきてくれたんだね。だったら、きっと……聖夜なら、きっと、僕達の未来を……)  ノエルは、聖夜をそっと抱き締め返した。 「聖夜……」 「ノエル……」  2人の意識が光に飲み込まれ、溶けていく。 (温かい……光だ……)  聖夜は光の温もりに抱かれながら、そっと意識を手放した。
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