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42 幸せな世界の真ん中で
* * *
明日人が運転するタイムマシンの中は、静まり返っていた。
あの薄暗い未来へ戻る……そう思うだけで、ノエル達の心が絶望で埋め尽くされる。
(怖い……けど、聖夜達を信じるんだ。きっと未来を変えてくれる……)
「もうすぐ着くぞ」
明日人の言葉でノエルは窓を見た。すると、そこに広がっていたのは……。
「……あれは」
ノエルの故郷に咲く、向日葵畑だった。
「すごい!街が見える!!」
エリスの声につられて前方を見ると、そこには戦争で破壊されたはずの建物が存在していた。
「……ここに駐めよう」
明日人は向日葵畑の入口にタイムマシンを駐めた。エリスが元気よくタイムマシンを降り、向日葵畑へ駆け出していく。
それに続くように、ウォンリィ、イグニ、アリーシャもタイムマシンから降りていった。
皆を見送り、ノエルは1人ゆっくりと地面に降り立つ。懐かしい景色に、自然と涙が零れ落ちた。
「本当に……変えてくれたんだ。最悪な未来を……変えてくれた……」
ノエルは涙を流しながら、遠い過去の仲間を思い、空を見上げた。爽やかな夏空が、どこまでも広がっている。
(聖夜……ありがとう……)
ノエルは涙を拭い、空に向かって微笑んだ。
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