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10 呪いの木
「そういえば、聖夜も言っていたな。柊は唯一の身内のような存在だって」
翔太がそう言うと、聖夜は頷いた。
「ああ。うち、母さんを病気で亡くして、父さんも行方不明で……」
「親父さんは生きてるのか?」
「え、ああ、多分……」
曖昧にうなずく聖夜に、翔太は更に問いかける。
「探そうとは思わないのか?」
「え……」
思いがけない質問に聖夜は戸惑った。
「……もう何年も会ってないから、居なくて当然だと思ってた。仕方ないんだって……」
そう言って黙り込む聖夜を見て、柊も俯く。
「……お父さん、一体どこに居るんだろう」
その時、通信機の音が鳴り響いた。
『聖夜君、柊さん、今どこに居る?』
「琴森さん!……今町立病院に居ます。どうかしたんですか?」
『裏山で高次元生物を目撃したという通報があったわ。すぐに向かって!』
琴森の声に、2人は顔を見合せて頷く。
「俺も行く」
翔太もそう言い、聖夜と柊の後を追いかけて裏山へ向かった。
* * *
裏山に到着すると、琴森から連絡が来た。
『山の上の神社に繋がる登山道があったはず。それを使って。……それと、今回は映像が本部に届かないからGPS情報でサポートするけど、あまりオペレーションに頼りすぎないで』
「了解!」
3人は、慎重な足取りで登山道を歩き始めた。
「一体どこに居るんだ……」
聖夜は辺りを見渡したが、生い茂る木々以外なにも見当たらない。3人が注意深く周囲を確認していたその時、聖夜のスマホが鳴り出した。
「え、誰だろう……」
画面には『神崎眞冬』という文字が表示されていた。
「もしもし、眞冬兄ちゃん……?」
『聖夜、今すぐ伏せろ』
「え?」
『早く』
「み、みんな伏せろ!」
聖夜の突然の大声に2人は慌てて姿勢を低くした。すると、3人の頭上を太い枝が走ったのだ。
「なんだこれ!?」
枝に触れようとする聖夜の手を、翔太が乱暴に掴んで止めた。
「触れるな!何が起きるか分からないんだ」
「ご、ごめん……」
『そこの少年の言う通りだ。植物系の高次元生物は毒を持つものも少なくないからな』
「そうなんだ……」
「聖夜、さっきから誰と電話してるの?」
柊の問いに、聖夜はスマホの画面を見せた。
「眞冬兄さん!」
「神崎眞冬……!?」
『そこに眞冬君が居るの!?』
琴森の驚いた声が聞こえた。
「いや、電話なんですけど……って、琴森さんも翔太も知ってるのか?」
「神崎眞冬って……元特部最強部隊の1人だぞ!名前しか知らないけど……」
「え!?」
『長い間特部を引っ張ってくれた隊員の一人よ。志野総隊長と一緒にね』
『お喋りはそこまで。……琴森さん、ここは俺達に任せて下さい』
眞冬の声がスマホ越しに琴森に届いた。
『……分かったわ。このまま通信は続けるけど、眞冬君の指示に従って』
「了解!」
聖夜達は頷き、眞冬の声に耳を傾ける。
『そうと決まれば始めるぞ。まず、状況を説明する。現在裏山は全域が高次元生物の根城だ。枝を一本一本倒していても仕方が無い。山頂にある本体を叩け』
「……分かった」
3人は山頂を目指して進み始めた。
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