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『柊、伏せろ』
「うん!」
聖夜のスマホのスピーカーから流れる眞冬の声に合わせて、3人は現れる枝をかわしながら山を登った。5分ほど山を登った時「星宮神社、この先」と書かれた看板が目に入った。
「よし、あと少し……」
聖夜が足を速めたその時だった。
『聖夜、待て!』
眞冬の声よりも先に、聖夜の右側に何本もの枝が迫ってくる。
「聖夜!」
翔太が聖夜を突き飛ばした。
聖夜の代わりに翔太の体に枝が絡まり締め上げられる。
「ぐっ……!」
細かい枝が翔太に突き刺さり、体内に毒が入り込む。
「翔太!」
「翔太君!」
「俺はいいから早く本体を叩け!それで終わる!」
「でも……」
翔太の顔は青ざめていたが、真っ直ぐと聖夜を見つめていた。
『そいつの言う通りだ。仲間を助けるためにも先を急げ!』
「……分かった!」
2人は頷き、山頂へ急いだ。
* * *
山頂の神社の境内には、大きな大木が生まれていた。幹にはいくつも目玉があり、聖夜と柊をニヤニヤと見つめている。
「早く倒して、翔太を助けないと……」
焦る聖夜を、眞冬が電話越しに制止する。
『焦るな聖夜。相手の弱点は上から3番目、左から2番目の瞳だ。そこを叩け』
「分かった!……柊、フォロー頼む」
「うん!」
柊が頷いたのを確認して、聖夜は加速した。空色の光を纏って急接近してくる聖夜を拒むように何本もの枝が彼に伸びる。
「させないから!」
柊の能力で枝の動きが遅くなった。
「聖夜!」
「ああ!……食らえ!」
聖夜は加速した勢いのまま眞冬に指定された目に拳を打ちつけた。しかし、手応えが無い。
「え……!?」
『聖夜!下がれ!』
眞冬の声に聖夜が下がると、目には傷1つ見受けられなかった。
「なんで……威力が足りなかったのか?眞冬兄ちゃん?」
聖夜は眞冬に声をかけるが応答が無い。
「もう……限界!」
柊のアビリティが解け、枝が聖夜に迫る。
「……!」
聖夜は思わず目を瞑った。その時だった。
「燃えろ」
その声と同時に大木が赤く燃え始めた。聖夜が声のした方向を振り返ると、千秋が翔太をおぶって立っていたのだ。
「総隊長!」
「2人とも無事だな」
「翔太は?」
「無事だ。毒も大したものではない。戻って清野に治してもらえば何も問題はない……な、翔太」
「はい……」
千秋の背中から翔太がか細い声で返事をする。その様子を見て、聖夜は安堵のため息をついた。
「でも、どうしてここに?」
柊の問いに、千秋は答える。
「聖夜、柊。君達2人に用事があって探していたんだ。眞冬と一緒にな。そうしたら、眞冬が山に高次元生物が居ることを察知した」
「そうだったんですか……。それで、私達に用事って?」
「ああ……眞冬」
千秋が名前を呼ぶと、境内入口の木の上から眞冬が飛び降りてきた。
「よっと……2人とも、おつかれ!」
「眞冬兄ちゃん!」
眞冬は2人に笑いかけると、千秋に向き直る。
「とりあえず本部に戻ろうぜ。そいつの治療もあるだろ」
「そうだな……麓に車を用意してる。2人とも、本部に戻ったら総隊長室に来てくれ」
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