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11 父の行方
* * *
本部に戻った2人は、総隊長室を訪れた。赤いじゅうたんが敷かれた、広い部屋。しかし、部屋の中には総隊長用のデスクと、来客用のソファとガラスのテーブル、そして、物がほとんど飾られていない棚が一つあるだけで、とても寂しい印象を受ける。聖夜はふと、棚に唯一飾られている写真が気になって近寄ろうとした。しかし、丁度よく扉が開いて千秋が入って来たので、慌てて柊の隣に戻った。
「2人とも、待たせたな」
「お待たせ~!」
眞冬も千秋の後に続いて、ひらひらと手を振りながら、部屋の中にやってくる。
「翔太は?」
聖夜が尋ねると、千秋は微笑んで言った。
「回復反動で眠っているよ。清野も問題ないと言っていたし、心配ないだろう」
「そっか。良かった……」
胸をなで下ろす聖夜を見て、千秋は何かを察したように言った。
「君を庇った時、翔太には余裕が無かったんだろう。普段の翔太ならあの場面で『かまいたち』を使うなりして枝を断っていたはずだ」
「そう、ですかね……」
「ああ。……昔、翔太が襲われた高次元生物も植物の形をしていたらしい。加えて大事な仲間が危険な状況だった。きっとその時のことを思い出して、必死だったんだろう。君だけのせいじゃない」
「……でも、俺の力不足も事実です。現に眞冬兄ちゃんや総隊長が居なかったら……」
落ち込む聖夜の肩を、眞冬はぽんと叩いた。
「なら、その穴を埋めるために特訓しなきゃな」
眞冬の言葉に、聖夜はしっかりと頷く。それを見て、眞冬は静かに微笑み、千秋に向かって声をかけた。
「……じゃ、それそろ本題に入るか、千秋」
「ああ。……2人をここに呼んだのは他でもない、君達の父親について話がしたかったからだ」
「父さんについて……」
2人は息を飲んだ。
「そう。君達の父親……宵月明日人についてだが、何かの事件に巻き込まれた可能性が高い」
「な、何でそう思うの?」
柊の問いに眞冬は真剣な顔で答える。
「ずっと調べてたんだ。……2人が夏実の家に来てから」
「眞冬兄さん……」
目を見開く2人を見ながら、眞冬は問いかける。
「2人はさ、父さんのこと、どの位分かる?」
聖夜と柊は顔を見合わせて首を横に振った。
「あんまり……俺達が子どもの時にはもう居なくて……」
聖夜がそう言うと、眞冬は真剣な面持ちで口を開いた。
「実はさ、俺達……2人の父さんに会ったことがあるんだ」
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