12 謎の少年

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* * *  2人はなんとか買い物を終え、警察署に戻る途中の公園で一休みすることにした。2人が座ったベンチは公園の端にあり、大きな桜の木の下で花見を楽しむ人々が一望できた。 「は~、重かった……」  司は溜息をつきながら、食材の入った袋をベンチに置く。その袋の中には大量の肉に加えて、店主が気を利かせて入れてくれた保冷剤も入っていた。 「これって、アビ課全員の分なのか?」  聖夜が聞くと、司は首を横に振った。 「まさか!付属学校に通う隊員の分だけだよ。それでも結構居るんだけどね」 「何人くらい居るんだ?」 「ざっと30人かな。全学年合わせてだけど」 「特部よりずっと多いな……」  聖夜が呟くと、司は興味津々といった様子で尋ねる。 「特部って全員スカウトされて入隊するんだよね。人数も少ないの?」 「ああ。うちは今7人。他の支部より多いらしいんだけどな」 「それだけ……!?」  司は目を丸くした。 「でも、アビ課より忙しくないと思うよ。俺達が相手にするのは高次元生物だけだし」 「そっか。……でも高次元生物ってすごく強いんだよね」  苦笑いする司の言葉を聞き、聖夜の脳裏に裏山での出来事が蘇る。  あの時、もし千秋が居なかったら……聖夜は今頃、大怪我をしていたかもしれない。いや、それだけではない。町の人の安全も、脅かされていた可能性がある。  もっと強くならなくては。周りの人を守るためにも。  聖夜は、自分の手のひらを見つめ、ギュッと強く握る。 「……ああ。俺、もっと頑張らないと」  そう言うと、聖夜は立ち上がった。 「そろそろ行こう」  司が頷き立ち上がったその時。 「きゃっ!」  大木の下で花見をしていた女性が悲鳴を上げた。彼女のすぐ傍で、急に男性が倒れたようだった。 「嘘、どうしたの?しっかりしてよ!」  女性は男性に必死に呼びかけるが応答が無い。 「何だ……?」  聖夜が辺りを見渡すと、同じ現象が他の木の下でも起こっていた。その場にいた半分以上の人々が気を失い倒れている。 「僕、警察に連絡する!」  司はそう言うとスマホを取り出した。司が通報する横で、聖夜は辺りを見渡したが、特に変わった様子も無かった。 (高次元生物の仕業なのか……それとも、誰かのアビリティか……?)  聖夜は頭を悩ませた。  ──その時。  聖夜のすぐ横で、司が倒れた。 「司……!?」  慌てて司の様子を確認したが、眠っているだけのようだった。 (……何だこれ)  聖夜は司の首筋が異様に赤くなって居るのに気がついた。 (……虫刺され?……まさか!)  聖夜は手前の木で倒れている男性を確認した。すると司と同様に首が赤く腫れ上がっていた。 (原因はこれか……) 「あの!」  男性のすぐ横に居た女性が必死の形相で聖夜に迫ってくる。 「夫は大丈夫なんですか!?」 「大丈夫で……」  「大丈夫です。俺が何とかします」聖夜はそう言おうとして口をつぐんだ。目にも見えない、何体居るかも分からない高次元生物を1人で倒すことなどできないのではないか。そんな考えが頭をよぎったからだ。 (俺だけじゃ力不足だ……)  そんな時だった。  誰かが黙り込んだ聖夜の肩を叩いたのだ。 「あの、顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?」  聖夜が顔を上げると、美しい金髪の少年が、微笑みながら聖夜を覗き込んでいた。
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