67人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
13 悩み事
柊はベッドの上で自室の天井を見上げていた。
(暇だな~……)
聖夜と翔太は任務で他県へ、白雪と深也はパトロールで外出中だった。海奈と花琳の行方は分からないが、2人は姉妹だという理由から、なんとなく一緒に居るような気がして、柊は探しに行く気が起きなかった。
(姉妹の時間、邪魔しちゃ悪いしな~……)
そう思った矢先。
「柊ちゃん、居る?」
花琳の声だった。柊がドアを開けると、そこには穏やかな笑顔を浮かべた花琳と海奈が立っていた。
「お茶会、やらない?」
花琳の提案に、柊は目を輝かせて頷く。
「やります!」
柊は花琳と海奈と共に、談話室に向かった。
* * *
「はい、どうぞ」
花琳は柊に紅茶を淹れて手渡す。
「ありがとうございます!」
「いえいえ」
そう言って微笑むと、花琳は席に着いた。花琳は自分の紅茶をこくりと飲んで、優しい声色で柊に尋ねる。
「柊ちゃん、もう特部には慣れた?」
「はい!少しずつですけど……」
柊は頷く。柊が聖夜と2人で特部に入ってからもうすぐ1ヶ月が経とうとしていた。日々の任務や琴森の授業など、始めは慣れなかったことにも、最近は慣れつつある。
「そう、良かったわ。何かあったら、いつでも言ってね。私でも、海奈でも、相談に乗るから」
花琳は蕾が綻ぶような笑顔を浮かべ、柊に優しく付け加えた。傍らの海奈も笑いながら頷く。
「柊よりも長く特部にいるし、力になれることも多いと思うよ」
「うん、ありがとう。……そういえば、2人はいつから特部に?」
「私が中学2年生、海奈が1年生の時に特部に入隊したの」
花琳は紅茶を一口飲んで、穏やかに目を閉じながら過去のことを思い返す。
「私ね、小さい頃特部に助けて貰ったことがあったの。それ以来、ずっと特部に憧れてて……だからここに来れたこと、本当に嬉しかった」
花琳はそこまで言うと、少し頬を染めながら、ぽつりと呟いた。
「それに、会いたい人にも会えたしね」
「会いたい人……?」
柊が海奈の方を見ると、海奈はそれに気がついて、こそりと耳打ちする。
(白雪さんのことだよ)
(白雪さん……?)
(あたしは覚えてないけど、昔2人は会ってたみたいで……姉さん、ずっと会いたがってたから)
柊は頭の中で整理する。
(白雪さんと花琳さんは昔会ってて、花琳さんはずっと白雪さんに会いたかった……ってことは!)
自分が大好きな恋バナの気配を察知して、柊は目を輝かせた。
最初のコメントを投稿しよう!