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彼女達の笑い声が、深也のトラウマを刺激する。胸が痛くなり、浅くなる呼吸を必死で整えようとしていると、中学生の深也が突然、振り返り、顔を歪めて笑った。
「ねぇ、笑えるね」
「……何が」
「目立っても、目立たなくても、このざまだからさ」
そう言う中学生の深也は、泣きながら笑っていた。
「もうよく分からないだろ?死にたいだろ?でも死ねないんだ。何でだろうね?」
感情と表情がチグハグなまま、中学生の深也は銃口を深也に向ける。
「待って……だめだ!」
「止めるなよ……!」
中学生の深也は顔を苦しそうに歪めた。
「ずっとこうしたかったんだろ……!僕が殺してやるッ!!」
そう叫んで泣いたまま、彼は深也に発砲した。
「……!」
辛うじて心臓は躱したが、左肩が撃ち抜かれた。中央支部のマントの青に、暗い赤が重なる。
「なんだよ、この期に及んで、生きようとしてるの?」
「……そうだよ」
深也は左肩を押さえたまま、中学生の自分へ歩み寄る。
「君が言うように、散々な学校生活だった。何をしても無意味だって、一度踏み外したら終わりなんだって思ったよ。僕に残された道は、もう、消えるしかないんだって……思ってた。でも、父さんや、特部の人達が……僕を、必要としてくれたんだ」
中学生の深也は拳銃を固く握りしめている。しかし深也は近づくのを止めなかった。
「特部にスカウトされたときは、正直、自暴自棄だった。でも、そこで出会った人は誰も僕を否定しなかった。生まれて初めて好きな人もできて……今、それなりに楽しいんだ」
深也は中学生の自分を抱き締めて言った。
「もう少しだけ、僕に時間をくれないかな」
「うっ……うぅぅ……!」
中学生の深也は声を上げて泣いた。すると、辺りが黒い霧に包まれ始める。やがて、中学生の深也は黒く染まり、先程戦った影に姿を変えた。
「ウゥゥ……イキタクナイィ……」
深也はポーチから拳銃を取り出し、影に突きつけた。
「……ごめん。僕は生きる」
乾いた音が辺りに鳴り響いた。
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