14 影の魔人

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* * *  影の生み出した世界が崩壊し、3人はもと居た天ヶ原駅前に戻ることができた。  海奈が空を見上げると、美しい夕焼けが広がっていた。どこまでも続く夕焼け空。彼女が今まで見た、どんな空よりも清々しく、綺麗だった。 「海奈!」  遠くから、他の任務に出ていた隊員たちが走ってくる。その先頭を走っていた花琳は、海奈に駆け寄るなり抱き締めた。 「海奈……無事で良かった…………」 「姉さん……俺……」 「分かってる。……決めたのね、海奈」 「……うん」  海奈は花琳の腕をほどいて、明るく笑った。 「俺、自分らしく生きる」  花琳はそんな海奈を見て、心から嬉しそうな顔で微笑んだ。 「柊ー!みんなー!」  聖夜が清野を連れて、3人の元へ走ってくる。 「大丈夫か!?」  聖夜は柊に駆け寄ると慌てて尋ねた。 「私は平気……それより、深也君が」  柊がそう言うより先に、清野は深也のもとへ駆け寄った。 「深也君が重傷だ……すぐに処置しよう」  清野は深也の腹部を『回復』し始めた。聖夜はその様子を心配そうに見つめる。 「……清野さん、深也は?」 「問題ないが、回復反動が酷いからね……運んでくれないか」 「はい!」  聖夜は元気に返事をして、深也を抱きかかえた。 「お、男にお姫様抱っこされるなんて……」  深也は顔を覆いながら呟く。それを見た聖夜は、心底申し訳なさそうに眉を下げた。 「ごめん深也……これが1番担ぎやすいんだ」 「ガチで謝らないで聖夜君……」  聖夜は深也を抱えたまま、柊に心配そうに尋ねた。 「柊は、大丈夫なんだな?」  聖夜の問いに、柊は力無く笑う。 「……足に力が入らない」 「何……!?ちょ、ちょっと考えさせてくれ」  聖夜は真顔で深也を見た。 「せ、聖夜君?」 「右手に深也、左手に柊で持てるかな……」 「ちょっと待って怖いからやめて……!」 「そうだ。やめておけ」  翔太と白雪も、柊達の元へ駆け寄ってきていたようだった。翔太は柊を見るなり、しゃがみこんで彼女に背を向けた。 「俺が柊を運ぶ。乗れ」 「翔太君、ありがとう。でも……」 「どうせ無茶したんだろ。黙って頼れ」 「……うん」  柊は少し申し訳なさそうに頷き、遠慮がちに翔太の背中に身を委ねた。その様子を見た聖夜は何とも言えない表情をする。 「お兄ちゃん、自分より背の高い人しか認めないからな……」 「うるさい。これから伸びるんだ」  翔太は聖夜を睨む。2人のやり取りを聞いていた柊は、彼の背中で楽しそうに笑った。 「とにかく……みんな無事で良かったよ」  白雪は全員に微笑んで言った。 「さぁ、帰ろう」
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