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影の生み出した世界が崩壊し、3人はもと居た天ヶ原駅前に戻ることができた。
海奈が空を見上げると、美しい夕焼けが広がっていた。どこまでも続く夕焼け空。彼女が今まで見た、どんな空よりも清々しく、綺麗だった。
「海奈!」
遠くから、他の任務に出ていた隊員たちが走ってくる。その先頭を走っていた花琳は、海奈に駆け寄るなり抱き締めた。
「海奈……無事で良かった…………」
「姉さん……俺……」
「分かってる。……決めたのね、海奈」
「……うん」
海奈は花琳の腕をほどいて、明るく笑った。
「俺、自分らしく生きる」
花琳はそんな海奈を見て、心から嬉しそうな顔で微笑んだ。
「柊ー!みんなー!」
聖夜が清野を連れて、3人の元へ走ってくる。
「大丈夫か!?」
聖夜は柊に駆け寄ると慌てて尋ねた。
「私は平気……それより、深也君が」
柊がそう言うより先に、清野は深也のもとへ駆け寄った。
「深也君が重傷だ……すぐに処置しよう」
清野は深也の腹部を『回復』し始めた。聖夜はその様子を心配そうに見つめる。
「……清野さん、深也は?」
「問題ないが、回復反動が酷いからね……運んでくれないか」
「はい!」
聖夜は元気に返事をして、深也を抱きかかえた。
「お、男にお姫様抱っこされるなんて……」
深也は顔を覆いながら呟く。それを見た聖夜は、心底申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめん深也……これが1番担ぎやすいんだ」
「ガチで謝らないで聖夜君……」
聖夜は深也を抱えたまま、柊に心配そうに尋ねた。
「柊は、大丈夫なんだな?」
聖夜の問いに、柊は力無く笑う。
「……足に力が入らない」
「何……!?ちょ、ちょっと考えさせてくれ」
聖夜は真顔で深也を見た。
「せ、聖夜君?」
「右手に深也、左手に柊で持てるかな……」
「ちょっと待って怖いからやめて……!」
「そうだ。やめておけ」
翔太と白雪も、柊達の元へ駆け寄ってきていたようだった。翔太は柊を見るなり、しゃがみこんで彼女に背を向けた。
「俺が柊を運ぶ。乗れ」
「翔太君、ありがとう。でも……」
「どうせ無茶したんだろ。黙って頼れ」
「……うん」
柊は少し申し訳なさそうに頷き、遠慮がちに翔太の背中に身を委ねた。その様子を見た聖夜は何とも言えない表情をする。
「お兄ちゃん、自分より背の高い人しか認めないからな……」
「うるさい。これから伸びるんだ」
翔太は聖夜を睨む。2人のやり取りを聞いていた柊は、彼の背中で楽しそうに笑った。
「とにかく……みんな無事で良かったよ」
白雪は全員に微笑んで言った。
「さぁ、帰ろう」
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