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「ほ、ほんとは言うつもり無かったんだ。海奈が恋愛事避けてるの、何となく分かってたし……も、もちろん付き合えたりしたら嬉しいけど、あの時は海奈に生きてて欲しくて必死だったんだ」
深也は懸命に続けた。
「そ、それに僕の気持ちだけ優先して無理に付き合うのは嫌だから……謝らないで欲しいよ」
「深也……」
「こんな僕だけど……これからも対等な仲間で居るって約束する」
「……うん。ありがとう」
そう言って申し訳なさそうに微笑む海奈を見て、深也の胸が苦しくなる。
(……こんな根暗な僕のためにこんなに考えてくれたんだ、十分だ。こんな僕のために……)
深也はふと柊の言葉を思い出した。
(もっと、自信を持てだっけ……)
深也は勇気を振り絞り、テーブルの下で拳を握りしめながら、海奈を真っ直ぐと見つめた。
「……み、海奈はまだ誰かを好きになれるか分からないって言ってたけど……僕きっとずっと海奈のこと好きだと思うんだ。だ、だから……」
深也は一呼吸置いて続けた。
「だから、そのことだけは覚えてて欲しいなって…………僕が、君のこと好きだってこと、だけは……さ。ぼ、僕も、意識して貰えるように……頑張る、から……」
照れくさくて、言葉尻がしぼむ。顔が火照っていく。深也は少し体を縮こめながら、上目遣いで海奈の様子を伺った。
海奈はというと、ぽかんとした顔で深也を見つめている。
そんな海奈の様子を見て、深也は慌てて付け加えた。
「あ、も、もちろん海奈が誰を好きなるかは海奈の自由だし、に、任務にも支障はきたさないから……!」
顔を真っ赤にしながら、体を強ばらせて必死に言葉を紡ぐ深也を見て、海奈は優しく笑った。
「ありがとな。俺も自分のことが分かるように頑張るよ」
そう言って海奈は微笑むと、椅子から立ち上がる。その表情は、嬉しそうに綻んでいた。
「……さて、部屋に戻ろうかな」
海奈はそう言うと、スタスタと談話室の外へ歩いて行った。
その後ろ姿を目で追いながら、深也は1人蹲る。
(調子乗った……対等な仲間で居るって約束してすぐなのに、何言ってんだ僕……)
頬が熱い。胸の鼓動も駆け足になっており、バクバクと音を立てている。
しかし、不思議と嫌な感じはしなかった。
(……でも、少し前進した気がする)
深也は立ち上がり、少し微笑んで談話室を後にした。
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