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15 中央支部のリーダー
影の高次元生物騒動から数日後、聖夜は、翔太と白雪と共に任務に出ていた。
場所は天ヶ原町住宅街。高次元生物は赤い肌をした人のような形をしていたが、体のいたるところに目がついており気味が悪い。
「イイイイ……!」
高次元生物が地面を殴ると、時間差で地面が揺れた。
『相手のアビリティは『地震』です!住宅街に大きな被害が出る前に討伐して下さい!』
「分かりました」
白雪は頷くと、聖夜に目配せする。
「聖夜君、頼むよ」
「はい!」
聖夜は地面に手を触れ集中した。
「『加速』!」
聖夜の力で『加速』した白雪と翔太が、空色の光を纏いながら、素早く高次元生物に近づく。
「『かまいたち』……!」
翔太が右腕を振るうと、風の刃が巻き起こり、高次元生物の左腕が切断された。
「白雪さん!」
「ああ。……凍てつけ!」
白雪が手のひらを高次元生物に向けると、奴の右腕がパキパキと凍り始めた。
「イイイイ!?」
高次元生物は慌てて2人に背を向けて、バタバタと逃げ出す。
しかし逃げた先には聖夜が待ち構えていた。
「イイイ!!」
「食らえっ!!」
聖夜は腕の動きを極端に速くし、拳を高次元生物に打ち込んだ。
「イ……」
高次元生物は痛みで気を失い、地面に倒れ込む。聖夜はそれを見下ろしながら、拳をギュッと握り直す。すると、右手にズキリと痛みが走った。
「っ…………」
「やったか?」
翔太と白雪も聖夜の元へ駆け寄ってきた。聖夜は2人に頷き、痛みをおして高次元生物に拳を振り下ろそうとする。
「とどめを……!」
聖夜が、再度腕に『加速』をかけたその時。
「待ってくれ」
白雪が、その拳を優しく止めた。
「白雪さん……?」
「僕がやるから」
白雪はそう微笑んで指を鳴らす。すると高次元生物が一瞬で凍りついた。
「砕けろ」
白雪がもう一度指を鳴らすと、高次元生物はバラバラに砕け散ってしまった。
「手が震えていたよ、聖夜君」
白雪はそう言って聖夜の手を包み込んだ。たしかに、聖夜の右手は赤く腫れている。しかし、白雪の手も、聖夜の手と同様に、小刻みに震えていた。
「無理はよくないから」
そう微笑む白雪の手は、手袋越しでも分かるほど、冷えきっていた。
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