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「ええ。もうすぐ命日ですから」
メイドの言葉を聞き、翔太は少し間を置いて、頷いた。
「……では、今日は帰ります。お手数お掛けしてすみませんでした。聖夜、今日は戻ろう」
翔太は有無を言わせぬ口調で聖夜に告げる。その様子を見て、聖夜は少し戸惑いつつも頷いた。
「あ、ああ……」
2人はメイドに会釈して、北原邸を後にした。
* * *
「……お墓参りなら、仕方ないか」
聖夜がそう言うと、翔太は頷いた。
「ああ。無理矢理聞くのも、おかしな話だからな」
翔太の言葉を聞きながら、聖夜は少し苦笑いして頭を搔く。
「そうだよな……ごめん。今日俺突っ走りすぎたな」
その様子を見て、翔太は静かに首を振り、少し遠くを見ながら言葉を紡いでいく。
「今日は空回りしたかもしれないが、聖夜と柊が来てから、特部は良い方向に変わり始めたと思う」
「そ、そうかな?」
「ああ。仲間同士の距離が縮まりはじめた。……少しお節介な所もあるが、2人のお陰かもしれない。きっと、今回のこともプラスになるさ」
翔太の言葉を聞いて、聖夜は照れながら笑った。
「……うん。ありがとう、翔太!」
その時、聖夜と翔太のスマホが鳴った。確認すると、花琳からのメッセージだった。
『柊ちゃんの提案で、公園でお花見してるよ。2人も良ければ来てね!』
その後の写真には4人と真崎が仲良く団子を食べながら桜を見ている写真が送られてきた。
「お花見か……早く行こう!」
聖夜はそう言うと、公園へ向かって駆け出した。
翔太は、バタバタと走っていく聖夜の後ろ姿を、しばらく目で追いかけ、やがて小さく笑った。
(……俺も変わったな)
翔太は微笑んで、聖夜の後をゆっくりと歩いた。
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