15 中央支部のリーダー

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* * *  一方、天ヶ原町郊外にある霊園で、白雪はある墓の前に佇んでいた。 「姉さん、久しぶり」  白雪はそう言って菊の花を飾る。空を見上げると、夕焼け色が辺りに広がり始めていた。近くの桜の木は満開で、花びらが散り始めている。 「……もうすぐ桜も終わりだね」  白雪は墓にむけて話しかけ続けた。 「……姉さん、僕、姉さんが目指した、みんなが笑顔でいられる世界にするために、命を懸けて戦うから。見守っていてね」  白雪は静かに微笑みながら、物言わぬ石に向かって口を開く。  ……その時、背後からジャリジャリと地面を歩く音が聞こえて、白雪は振り返った。  すると、そこには、千秋が花束を片手に立っていたのだ。 「……来ていたのか」  千秋は白雪から目を逸らし、静かに呟く。 「総隊長……おつかれさまです」  それに対して、白雪はいつものように柔和な笑みを浮かべた。 「姉さんに会いに来てくれたんですね」  白雪が笑顔を貼り付けて言うと、千秋は黙って頷いた。 「……きっと姉さんも喜んでますよ」  その時、白雪のスマホが鳴った。白雪は花琳からのメッセージを確認する。 「仲間に呼ばれているので、失礼します」  そう言って立ち去ろうとする白雪に、千秋は声をかけた。 「……白雪、君は春花にはなれないんだぞ」  すると白雪は笑顔は崩さずに、しかし冷たく言った。 「分かってますよ。そんなこと」  白雪は千秋の脇を黙って通り過ぎ、霊園を立ち去った。 「……春花、君も恨んでいるのか」  千秋は1人、墓に向かって尋ねる。勿論、返答はない。 「……今の僕を君が見たら、きっと呆れてしまうな」  千秋は、1人呟く。  彼の肩に、桜の花びらがひとひら舞い落ちる。それに気づかないまま、千秋は墓に向かって歩み寄り、その墓石に触れた。
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