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* * *
2人が花琳の部屋に着くと、聖夜はノックしようとして手を止めた。
「あれ、入らないの?」
柊が首を傾げると、聖夜は慌てて言った。
「男子に部屋入られたら嫌がるかな……」
たしかに、その可能性はあるかもしれない。柊は遠慮する兄の言葉に頷いてドアノブに手をかけた。
「じゃあ、聖夜はここに居て」
柊はドアをノックしながら、部屋の中に向かって呼びかける。
「花琳さん、海奈?」
柊が声をかけていると、ドアがガチャリと開いて、中から涙目の花琳が現れた。
「柊ちゃん……!」
「花琳さん!何かあったんですか?」
「海奈が倒れて……」
「と、とりあえず中入りますね」
柊が急いで部屋に入ると、海奈が仰向けで倒れていた。
「海奈!?」
「ひ、柊……来てくれたんだな……」
「何があったの!?」
「な……鍋の中を……」
「鍋?」
柊はキッチンに置かれていた鍋の蓋を開ける。すると、刺激臭が辺りに広がった。
「な、何これ……」
鍋の中にはどす黒い色をした液体が入っていた。全体的にドロドロとしており、お玉で掬うと、中に黒い固形物が入っていることが分かった。
この黒いのは何の具材なのか、そもそも食材なのか……柊には検討もつかない。ただ、何とも言えない表情で、柊は鍋を見つめることしかできなかった。
「スープを作ろうとして失敗しちゃって……それを食べた海奈が急に倒れて……」
花琳は声を潤ませながら、顔を両手で覆う。
「私どうしても料理だけはできないの……」
柊はその言葉を聞いてすぐ、花琳の両手を勢いよく握った。
料理が苦手な仲間を見つけて嬉しかったのだろうか。非常事態だというのに、柊の目はキラリと光っていた。
「私もです!!」
「柊ちゃん……!」
2人で手を握り合っていると、やはり心配になったのか、聖夜が部屋を覗き込んできた。
「な、なぁ大丈夫か……って、すごい匂いだな!?」
「あ、聖夜!良いところに!」
柊は、聖夜に走りよって、拳を握りしめながら元気に頼み込んだ。
「スープの作り方、教えて!」
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