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* * *
15分後、花琳の部屋にはコンソメスープの良い香りが広がった。鍋の中には色とりどりの野菜と鶏肉が入っている。見た目も美味しそうだ。
「よし。完成!」
「おお~!」
柊と花琳は目を輝かせる。
「聖夜君、料理得意なのね!」
「家で作ってたんです。おばさんがよく料理を教えてくれて」
聖夜は照れ笑いを浮かべる。
「何か、美味そうな匂いがする……」
海奈がムクリと起き上がり聖夜の元へ近寄ってきた。
「味見してみるか?」
聖夜はそう言うと小皿にスープを盛り付けて渡した。海奈はそれを受け取り、こくりと飲む。
すると、先程までの元気の無さが嘘のように、海奈の瞳に光が宿った。
「何これ、めっちゃ美味い!」
「そっか、良かった!」
聖夜はそう言って笑って、ふと首を傾げる。
「にしても、何であんなことに……?」
すると、海奈が口を開いた。
「姉さん、料理下手だからいつも俺が作ってたんだけどさ……」
海奈は、そこまで言ってテーブルの上に置かれた黒い重箱に目を移す。それにつられて、聖夜と柊も重箱を見た。
「さっき白雪さんがその弁当をお裾分けに持ってきたんだ。それがすごく美味しくて……それで姉さんも料理頑張るって張り切っちゃって」
「な、なるほど……」
柊が苦笑いしながら花琳を見ると、海奈の傍らで申し訳なさそうに俯いていた。
「あ~……確かに美味しいもの貰うと頑張りたくなるよな」
(……そういうことじゃないだろうけどね)
うんうんと頷く聖夜を見て柊は乾いた笑い声を出した。
聖夜はそれを気にもとめず、両手をパンッと合わせて、明るい笑顔を花琳に見せる。
「まぁ、とりあえず、スープ食べましょう!……って言っても俺と柊は朝ご飯食べちゃったし、他の人を呼んでこようかな」
それだけ言って、聖夜は部屋を出た。
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