16 花琳の想い

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* * *  15分後、花琳の部屋にはコンソメスープの良い香りが広がった。鍋の中には色とりどりの野菜と鶏肉が入っている。見た目も美味しそうだ。 「よし。完成!」 「おお~!」  柊と花琳は目を輝かせる。 「聖夜君、料理得意なのね!」 「家で作ってたんです。おばさんがよく料理を教えてくれて」  聖夜は照れ笑いを浮かべる。 「何か、美味そうな匂いがする……」  海奈がムクリと起き上がり聖夜の元へ近寄ってきた。 「味見してみるか?」  聖夜はそう言うと小皿にスープを盛り付けて渡した。海奈はそれを受け取り、こくりと飲む。  すると、先程までの元気の無さが嘘のように、海奈の瞳に光が宿った。 「何これ、めっちゃ美味い!」 「そっか、良かった!」  聖夜はそう言って笑って、ふと首を傾げる。 「にしても、何であんなことに……?」  すると、海奈が口を開いた。 「姉さん、料理下手だからいつも俺が作ってたんだけどさ……」  海奈は、そこまで言ってテーブルの上に置かれた黒い重箱に目を移す。それにつられて、聖夜と柊も重箱を見た。 「さっき白雪さんがその弁当をお裾分けに持ってきたんだ。それがすごく美味しくて……それで姉さんも料理頑張るって張り切っちゃって」 「な、なるほど……」  柊が苦笑いしながら花琳を見ると、海奈の傍らで申し訳なさそうに俯いていた。 「あ~……確かに美味しいもの貰うと頑張りたくなるよな」 (……そういうことじゃないだろうけどね)  うんうんと頷く聖夜を見て柊は乾いた笑い声を出した。  聖夜はそれを気にもとめず、両手をパンッと合わせて、明るい笑顔を花琳に見せる。 「まぁ、とりあえず、スープ食べましょう!……って言っても俺と柊は朝ご飯食べちゃったし、他の人を呼んでこようかな」  それだけ言って、聖夜は部屋を出た。
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