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「海奈が怪我をして泣いてた私を励ましてくれたの。きっと治るよ、大丈夫って。ずっと手を握ってくれた。白雪君のお陰で、気がついたら笑顔になってたの。家では辛いこともあったけど、また会いたい、お話ししたいって思ってたら、何だか頑張れたんだ」
花琳は、幸せそうに微笑みながら、胸に手を当てて目を閉じた。その様子はまるで、大切な思い出を噛み締めているようだった。
「すごく素敵です!」
花琳の話を聞き終えて、柊は目を輝かせる。
「俺は全然覚えてないんだけどな」
海奈は少し頬を掻いて、やがて頭の後ろで腕を組みながら明るく笑った。
「……でも、姉さんがそんなに言うなら、俺は姉さんを応援してるよ」
「私も!……ていうか、今言ったのって白雪さん知ってるんですか?」
柊の問いに、花琳は苦笑いして首を傾げた。
「さぁ……聞いたこと無いから分からないわ」
「なら、それ言いましょうよ!」
「え!そ、そんな……」
「告白より簡単だろ」
海奈の言葉に花琳は少し悩んで頷く。
「……確かにそうね。それに、あの時のお礼はずっと言いたかったかも……」
すると海奈は花琳の肩をぽんと叩いた。
「よし、思い立ったらすぐ行動だ」
「え?」
「ほら、白雪さん探しに行きましょう!」
戸惑う花琳の腕を2人は引っ張った。
「ちょ、ちょっと~!」
海奈と柊に引き摺られる形で、花琳は部屋を後にした。
しばらくして、聖夜が翔太と深也を連れて戻ってきた。
「ただいまー!」
聖夜は元気にドアを開けたが、誰もいない室内を見て首を傾げる。
「あれ?誰も居ない……何で?」
「鍵もかけずにどこ言ったんだ?」
聖夜は戸惑い、翔太は不審そうに言った。
そんな中、深也はテーブルの上に置かれた重箱を見て何かを察する。
「……さ、3人で食べてよう!そのうち戻ってくるかもしれないし……」
「うーん……それもそっか!翔太、どのぐらい食べる?」
「……多めがいい」
「了解!俺もちょっと食べようかな」
2人がワイワイと盛りつけを始めるのを横目で見ながら、深也は苦笑いを浮かべた。
(花琳さん、ご愁傷様……)
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