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中学校前のバス停にあるベンチに座りながら、花琳はエリスと名乗る少女に白雪のことを話した。
膝の上で手をギュッと握りながら話す花琳に対して、エリスは足をぶらぶらさせながら、ゆったりと話を聞いている。
「へぇ、そっかぁ……」
エリスは、花琳に向かって、うんうんと頷く。
「でも、まだ好きって言ってないんでしょ?」
「そうだけど……」
「そんなに好きなら言っちゃいなよ。誰かに盗られちゃうよ?」
「で、でも……」
「じゃあ、エリスが盗っちゃお!」
エリスは人差し指を自分の口元に当てながら、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「そ、それは駄目!」
花琳は慌ててエリスに身を乗り出した。
するとエリスは大きな声でケラケラと笑った。
「冗談~!エリス恋してる人好きだから、応援してあげる!」
「あ、ありがとう……」
花琳が顔を赤くして笑いかけたときだった。
「助けて!」
住宅街の方から、悲鳴が聞こえた。
「化け物だ……!」
花琳が声のした方を見ると、人々が慌てて逃げてくるのが目に入った。花琳はすぐさま、逃げてきた背の高い男性に駆け寄り、尋ねる。
「あの、どうかしたんですか?」
花琳が尋ねると、逃げてきた男性は怯えた顔で答えた。
「巨大な高次元生物が現れて……!」
「場所は?」
「む、向こうです!臨海公園の中に……!」
「……分かりました」
花琳は頷いて、指し示された方に向かって走り出す。
「待って!」
しかし、その彼女のマントの裾を、エリスが掴んで止めた。
「そっち、危ないよ?」
エリスは、不安げな眼差しを花琳に向ける。しかし花琳は、エリスに向かって微笑みを見せた。
「大丈夫。私が倒してくるから」
「何で?何でお姉さんが戦うの?」
エリスの問いかけに、花琳ははっきりと答える。
「特部だから!」
「……そっか」
それを聞いたエリスは、静かにマントを手放す。花琳はそれを確認し、脇目も振らずに高次元生物の元へと駆け出した。
エリスはその背中を見て、にやりと歪んだ笑みを浮かべる。
「特部かぁ……ふふ」
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