16 花琳の想い

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* * *  中学校前のバス停にあるベンチに座りながら、花琳はエリスと名乗る少女に白雪のことを話した。  膝の上で手をギュッと握りながら話す花琳に対して、エリスは足をぶらぶらさせながら、ゆったりと話を聞いている。 「へぇ、そっかぁ……」  エリスは、花琳に向かって、うんうんと頷く。 「でも、まだ好きって言ってないんでしょ?」 「そうだけど……」 「そんなに好きなら言っちゃいなよ。誰かに盗られちゃうよ?」 「で、でも……」 「じゃあ、エリスが盗っちゃお!」  エリスは人差し指を自分の口元に当てながら、悪戯っぽい笑みを浮かべる。 「そ、それは駄目!」  花琳は慌ててエリスに身を乗り出した。  するとエリスは大きな声でケラケラと笑った。 「冗談~!エリス恋してる人好きだから、応援してあげる!」 「あ、ありがとう……」  花琳が顔を赤くして笑いかけたときだった。 「助けて!」  住宅街の方から、悲鳴が聞こえた。 「化け物だ……!」  花琳が声のした方を見ると、人々が慌てて逃げてくるのが目に入った。花琳はすぐさま、逃げてきた背の高い男性に駆け寄り、尋ねる。 「あの、どうかしたんですか?」  花琳が尋ねると、逃げてきた男性は怯えた顔で答えた。 「巨大な高次元生物が現れて……!」 「場所は?」 「む、向こうです!臨海公園の中に……!」 「……分かりました」  花琳は頷いて、指し示された方に向かって走り出す。 「待って!」  しかし、その彼女のマントの裾を、エリスが掴んで止めた。 「そっち、危ないよ?」  エリスは、不安げな眼差しを花琳に向ける。しかし花琳は、エリスに向かって微笑みを見せた。 「大丈夫。私が倒してくるから」 「何で?何でお姉さんが戦うの?」  エリスの問いかけに、花琳ははっきりと答える。 「特部だから!」 「……そっか」  それを聞いたエリスは、静かにマントを手放す。花琳はそれを確認し、脇目も振らずに高次元生物の元へと駆け出した。  エリスはその背中を見て、にやりと歪んだ笑みを浮かべる。 「特部かぁ……ふふ」
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