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17 暴走
エリスがそう囁くと、白雪は胸を押さえて蹲った。
「はぁっ……はぁ……」
エリスは優しく微笑みながら、白雪の顔を覗き込む。
「もう押さえつけなくてもいいんだよ?ほら、全部吐き出しちゃいなよ」
「うっ……」
エリスの声に呼応するように、辺りが急に猛吹雪になった。エリスはそれを見て、心の底から楽しそうに、ケラケラと笑う。
「あはは!すごいねお兄さん!『このまま全て出し切って仲間もろとも死んで』」
白雪は凍えそうになりながら、フラフラと立ち上がる。
そして震える手を花琳に向けた。
「……『氷牙』」
すると、花琳めがけて氷の刃が飛んできた。
「……!」
花琳は咄嗟に目をつぶる。
その時、花琳の身体を誰かが抱えた。
「『加速』!」
聖夜が花琳を抱きかかえ、氷の刃を躱したのだ。
「聖夜君……!」
「大丈夫ですか!?」
聖夜が心配そうに尋ねるのに対して、花琳はしっかりと頷く。
「花琳さん、白雪さん!」
後ろから翔太を始めとした他の面々も向かってきた。聖夜は花琳をそっと地面に下ろし、仲間たちの方を見た。
「姉さん!」
海奈は花琳に駆け寄り、その体を支える。
「姉さん、腕が……」
「大丈夫よ。……それより白雪君が」
全員が白雪に目を向ける。
「……ぼ、ぼくは、必要と……されてない……」
白雪の体が徐々に氷で覆われ、変形し始めていた。
左半身が氷によって獣のような形を作る。その表情にはいつものような微笑みは無かった。
「何だかいっぱい集まってきたね!」
エリスは嬉しそうに笑った。
「でも残念。エリスが『洗脳』したから、みんなが死ぬまでお兄さんは止まらないよ?」
エリスはそう言って、わざとらしく溜息をつくと、すぐに笑顔に戻って中央支部の面々に両手を振った。
「後はお兄さんに任せちゃお。ばいばい!」
すると辺りが光に包まれ……エリスの姿が、消えた。
「今の子は……?」
聖夜が尋ねると、翔太は首を横に振る。
「今は白雪さんを何とかするのが先だ」
「……そうだな」
聖夜は頷き白雪を見据える。白雪の瞳に光は無く、苦しみに顔を歪めてこちらを睨みつけていた。
それを揺れる瞳で見つめた後、聖夜は目を閉じて集中する。
(普段とは違う、相手を倒さずに正気に戻す戦い方……)
聖夜は地面に手を置いて呟いた。
「……『加速』」
味方全員の体が、空色の光に包まれ、軽くなる。聖夜は仲間たちを真剣な顔で見渡した。
「白雪さんが力を使い切る前に気絶させよう。どうかな?」
聖夜が問うと、全員が頷いた。
「……よし、行こう!」
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