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聖夜は右手をしっかりと握りしめ、『加速』しながら白雪に突っ込んだ。
「来るな……!」
白雪は苦しそうに顔を歪めながら、氷でできた剣を構える。
「ぼくは……だれよりも強くならなきゃいけないんだ……。姉さん、みたいに……!」
白雪はそう言うと、聖夜に剣を振り下ろした。聖夜はそれを素早く躱し、柊に視線を送る。
「柊!」
「分かってる!『遅延』!」
白雪の動きが、極端に遅くなる。攻めるなら今だ。聖夜は白雪の体に向かって右ストレートを繰り出した。
しかし、攻撃を繰り出したその瞬間。
「……このままじゃ……だめ、なんだ……」
白雪の苦しそうな表情を見て、躊躇いが生まれる。
「え……?」
聖夜が拳の勢いを弱めたその隙に、白雪が剣で彼ををなぎ払った。
「うぐっ……」
聖夜は斬撃を受け、よたりと後ろに倒れ込む。
「聖夜君!」
それを、寸でのところで花琳の蔦が受け止めた。
「大丈夫?」
「なんとか……」
聖夜の上半身には大きな切り傷ができていた。しかし、聖夜は痛みに負けまいと身体に力を入れ、体制を整える。
「っ……、こんなになるまで、どうして俺達を頼ってくれなかったんだ!!」
聖夜の胸の内に、やりきれない感情が込み上げる。聖夜は拳を強く握りしめ、白雪を潤んだ目で睨んだ。
しかし、聖夜の気持ちは白雪には届かない。白雪は聖夜達を睨みながら、右手を高く上げた。
「押し潰されろ……!」
すると、空から巨大な氷塊が降り注いできたのだ。
「ちっ……」
深也は氷塊を躱しながら舌打ちする。
「圧倒的過ぎるでしょ……」
「『激流』!」
海奈が白雪に向けて激流を放つも、全て凍りついてしまい意味を為さない。
「俺達じゃ止められないのか……!?」
海奈が悔しそうに唇を噛む。そんな彼女の頭上に、氷塊が迫っていた。
海奈はそれに気づき、目を見開く。
「しまった……!」
「『かまいたち』!!」
絶体絶命かと思われた、その時。翔太の渾身のかまいたちが、氷塊を砕いた。
「みんな、諦めるな!!白雪さんを人殺しにはさせない!」
翔太は息を切らしながら、それでも大きな声で言い放った。
「まずはこの猛攻を止める……『竜巻』!」
翔太の激しい竜巻が、白雪を閉じ込める。
しかし次の瞬間、剣を持った白雪が、翔太の目の前に現れた。
「俺の竜巻を一瞬で抜け出したっていうのか……!」
「ぼくにかまうな……!」
白雪はそう言うと剣を振りかざした。
「っ……!」
翔太に向かって、剣が振り下ろされる、1秒前。白雪の腕を、新緑の蔦が縛り付けた。
翔太が振り返ると、花琳が、傷ついた腕を必死に白雪へ伸ばしていた。
「お願い白雪君……戻ってきて……!」
そう言って涙を流す花琳を見て、白雪は顔を歪める。
その時、白雪の手から剣が落ちた。
しかし、次の瞬間、花琳の蔦が凍りつき、バラバラに砕け散った。
「凍てつけ……!」
白雪が指を鳴らすと、全員の足が凍りつき、身動きがとれなくなってしまった。
「そんな……ここまで圧倒的なんて……」
聖夜は悔しそうに目を伏せる。
「……『氷牙』」
白雪が生み出した氷の刃が、聖夜達に鋭く迫った。
(くそ……!)
その場の全員が死を覚悟した、その時だった。
「『火炎弾』」
その声と共に真紅の火球が氷の刃にぶつかり、相殺した。
「その声は……総隊長!?」
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