17 暴走

2/5
前へ
/232ページ
次へ
 聖夜は右手をしっかりと握りしめ、『加速』しながら白雪に突っ込んだ。 「来るな……!」  白雪は苦しそうに顔を歪めながら、氷でできた剣を構える。 「ぼくは……だれよりも強くならなきゃいけないんだ……。姉さん、みたいに……!」  白雪はそう言うと、聖夜に剣を振り下ろした。聖夜はそれを素早く躱し、柊に視線を送る。 「柊!」 「分かってる!『遅延』!」  白雪の動きが、極端に遅くなる。攻めるなら今だ。聖夜は白雪の体に向かって右ストレートを繰り出した。  しかし、攻撃を繰り出したその瞬間。 「……このままじゃ……だめ、なんだ……」  白雪の苦しそうな表情を見て、躊躇いが生まれる。 「え……?」  聖夜が拳の勢いを弱めたその隙に、白雪が剣で彼ををなぎ払った。 「うぐっ……」  聖夜は斬撃を受け、よたりと後ろに倒れ込む。 「聖夜君!」  それを、寸でのところで花琳の蔦が受け止めた。 「大丈夫?」 「なんとか……」  聖夜の上半身には大きな切り傷ができていた。しかし、聖夜は痛みに負けまいと身体に力を入れ、体制を整える。 「っ……、こんなになるまで、どうして俺達を頼ってくれなかったんだ!!」  聖夜の胸の内に、やりきれない感情が込み上げる。聖夜は拳を強く握りしめ、白雪を潤んだ目で睨んだ。  しかし、聖夜の気持ちは白雪には届かない。白雪は聖夜達を睨みながら、右手を高く上げた。 「押し潰されろ……!」  すると、空から巨大な氷塊が降り注いできたのだ。 「ちっ……」  深也は氷塊を躱しながら舌打ちする。 「圧倒的過ぎるでしょ……」 「『激流』!」  海奈が白雪に向けて激流を放つも、全て凍りついてしまい意味を為さない。 「俺達じゃ止められないのか……!?」  海奈が悔しそうに唇を噛む。そんな彼女の頭上に、氷塊が迫っていた。  海奈はそれに気づき、目を見開く。 「しまった……!」 「『かまいたち』!!」  絶体絶命かと思われた、その時。翔太の渾身のかまいたちが、氷塊を砕いた。 「みんな、諦めるな!!白雪さんを人殺しにはさせない!」  翔太は息を切らしながら、それでも大きな声で言い放った。 「まずはこの猛攻を止める……『竜巻』!」  翔太の激しい竜巻が、白雪を閉じ込める。  しかし次の瞬間、剣を持った白雪が、翔太の目の前に現れた。 「俺の竜巻を一瞬で抜け出したっていうのか……!」 「ぼくにかまうな……!」  白雪はそう言うと剣を振りかざした。 「っ……!」  翔太に向かって、剣が振り下ろされる、1秒前。白雪の腕を、新緑の蔦が縛り付けた。  翔太が振り返ると、花琳が、傷ついた腕を必死に白雪へ伸ばしていた。 「お願い白雪君……戻ってきて……!」  そう言って涙を流す花琳を見て、白雪は顔を歪める。  その時、白雪の手から剣が落ちた。  しかし、次の瞬間、花琳の蔦が凍りつき、バラバラに砕け散った。 「凍てつけ……!」  白雪が指を鳴らすと、全員の足が凍りつき、身動きがとれなくなってしまった。 「そんな……ここまで圧倒的なんて……」  聖夜は悔しそうに目を伏せる。 「……『氷牙』」  白雪が生み出した氷の刃が、聖夜達に鋭く迫った。 (くそ……!)  その場の全員が死を覚悟した、その時だった。 「『火炎弾』」  その声と共に真紅の火球が氷の刃にぶつかり、相殺した。 「その声は……総隊長!?」  
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加