17 暴走

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 聖夜が後ろを見ると、そこには千秋が立っていた。 「どうしてここに……」 「隊員を守るのが総隊長たる私の役目だろう。それに……白雪とは、決着をつけなければならないからな」  千秋は白雪を真っ直ぐ見据えた。 「勝負だ。白雪」  白雪は千秋に向かって、憎悪の眼差しを向ける。 「総隊長……僕は、貴方を許さない」  千秋はそんな白雪に向かって不敵に微笑んだ。 「どうした?いつもと違って余裕が無いな。……全然春花に似ていない」 「……っ!」  白雪は挑発する千秋を鋭く睨みつけ、氷の刃を放った。  鋭く光る透明な刃。氷で出来ているとはいえ、当たれば大怪我は免れないだろう。  しかし、千秋は一切の動揺を見せず、白雪を見据えていた。 「通用しない手を二度も使うな」  千秋が地面を踏みしめると、炎の壁が生まれた。赤い炎が、刃を全て溶かしていく。 「ちっ……」  白雪は氷で剣を生み出し、鬼の形相で千秋に斬りかかった。 「貴方のせいで姉さんが死んだんだ!」  激しい憎悪と、悲しみが混ざり合い、ぐちゃぐちゃになった白雪の表情。それを、千秋は切なそうに見つめる。彼は斬撃を躱すことなく、自らの右腕で剣を受け止めた。  剣に切られた右腕から、血が出てくる。しかし、千秋は顔色1つ変えなかった。  自分の傷などどうでもいい。自分の痛みなどどうでもいい。千秋は、自分の怪我には目もくれず、白雪の苦しさに歪んだ表情だけを見つめていた。 「どうして、姉さんを……守ってくれなかったんだっ……!!」  白雪は尚も、泣きながら剣を振りかざす。 「……白雪」  千秋は左手に炎を纏い、それを受け止めた。  剣は炎の熱で徐々に形を失い溶け落ちていく。そして白雪もまた、勢いのまま地面に泣き崩れた。 「どうして……姉さんは……」  凍りついた世界で泣きじゃくる白雪を、千秋はただ、抱き締める。  すると、白雪を覆っていた氷が淡い赤色の炎で溶けていった。 「……ごめん。白雪」  千秋がそう言うと、白雪はそのまま気を失った。  吹雪が止み、全員の足を覆っていた氷が溶ける。  千秋は白雪を抱きかかえ、全員に向けて辛そうに微笑んだ。 「……戻ろう」
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