3 運命の分かれ目

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* * *  千秋に車で連れられて来たのは、町の郊外にある立派な黒い建物だった。警察署と似たつくりの、3階建ての建物。玄関の、艶のある黒い壁には、金色の文字で「特殊戦闘部隊 中央支部」と刻まれている。 「着いたぞ」 「ここが特部の本部……?」    柊が尋ねると、千秋は頷いた。 「ああ。ここは本部兼中央支部だ」 「支部ってことは、他にも部署があるんですか?」 「そうだ。その事についても中に入って話をしよう」  静かに建物に向かう千秋の後に続いて、聖夜と柊も入口の自動ドアをくぐる。すると、千秋の姿を見つけた赤毛の女性が、受付から慌てて駆け寄ってきた。 「志野総隊長!おつかれさまです!」 「ん、君は……」 「昨日付けで配属になりました!新人オペレーターの真崎日菜子(まさきひなこ)です!」 「ああ、君が例の。琴森はどこだ」 「私を呼びました?」  千秋が尋ねと、艶やかな長い黒髪の女性が、受付窓口の横の扉を開けて、こちらへ向かってスタスタと歩いてきた。彼女は、聖夜と柊を見るなり、何かを察したように真剣な顔になる。 「総隊長、もしかして2人が……」 「ああ。こちらは宵月聖夜と宵月柊。新たに中央支部に配属する隊員だ。……2人とも、彼女はここの支部長だ。入隊後分からないことがあったら彼女に聞いてくれ」 「琴森聡美(こともりさとみ)よ。よろしくね、2人とも」  琴森は、髪をかきあげながら柔らかく微笑んだ。その大人っぽい仕草に見とれている聖夜の足を、柊がげしっと蹴る。 「痛っ…………。よ、宵月聖夜です。よろしくお願いします!」 「宵月柊です。よろしくお願いします」 「よし。それでは総隊長室に向かおう……」 「おーい、千秋!」  背後からの声に振り返ると、書類を持った眞冬が玄関へ入ってくるところだった。 「頼まれてた依頼これでよかったか……って、聖夜に柊!?」 「眞冬兄ちゃん!」 「何でここに居るんだ?アビ課は……」 「落ちたけど、特殊戦闘部隊にスカウトされたんだ!」 「そっか……」  複雑そうな表情をする眞冬に、聖夜と柊は首を傾げる。 「眞冬兄ちゃん?」 「眞冬兄さん、どうかしたの?」  眞冬は、不思議そうな顔をする2人に対して慌てて笑顔を作ると、首を横に振った。 「……なんでもないよ」 「眞冬、その資料……例のものか?」  千秋が尋ねると、眞冬は慌てて頷いた。 「そうそう!……できれば早めに話したい。今、時間良いか?」 「……分かった。琴森、後を頼む」 「了解。……さあ、2人とも、ついてきて。真崎さんは受付業務をお願い」 「はい!」  2人が琴森の後をついて廊下の奥へ消えていく。それを見送ってから、眞冬は千秋に尋ねた。 「お前……夏実の家が引き取った子だって分かってて特部に入れたのか?」 「……ああ。だがあの能力、アビ課に留めておくのは惜しい」 「あいつが何で2人を特部から遠ざけておいたのか、分かってるよな?」  眞冬にしては珍しく厳しい声だった。 「……ああ」  千秋は右手の薬指に嵌めた桜を象った指輪を見つめて、静かに呟く。 「守るさ。それが総隊長の仕事だからな」
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