21 燕の記憶

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21 燕の記憶

 総隊長室を解散した後、非番だった聖夜は、真っ直ぐ町立病院に向かっていた。 「誕生日プレゼントか……何が入ってるんだろう」  聖夜はプレゼントを空にかざす。ハッピーバースデーと書かれた小さな赤いシールの貼られたそれは、シンプルにラッピングされており、聖夜の片手に収まるサイズだ。 「そういえば柊に誕生日プレゼントなんて渡したことないな。同じ日が誕生日なのもあるけど……。翔太はほんとに妹思いだな」  そんなことを考えながら、聖夜は病院の自動ドアを通り、玄関ホールのエレベーターに乗る。  2階です。というアナウンスと共に、ドアが開く。聖夜は精神科病棟で降りて、燕のいる病室へ向かった。  病室の扉の前に辿り着いた聖夜はコンコンと数回ノックし、中へ声を掛ける。 「燕ちゃん、入るよ」 「はい」  燕の声が聞こえたのを確認し、聖夜はドアを開けて中へ入った。 「あ、聖夜さん。こんにちは」  燕は控えめに微笑みながら会釈をする。  出会ったばかりの時は、無表情でいることが多かった燕。そんな彼女も、最近はこうして笑顔を見せてくれるようになった。  少なくとも、聖夜の前ではそうだ。 「今日は1人ですか?」 「うん。燕ちゃん、手、出して」  聖夜は、いつも通り穏やかな声色で、燕にそう促した。  燕はそれを聞き、少し不思議そうな顔をしながら右手を出す。 「聖夜さん、手がどうかしたんですか……?」 「これ、翔太からの誕生日プレゼントだって」  聖夜は燕の手に、先程託されたプレゼントを乗せた。燕はそれを見て、嬉しそうに目を輝かせる。 「お兄さんから……!あの、開けてもいいですか?」 「もちろん!」  燕は、丁寧にラッピングを開封する。すると中から、羽をかたどったゴールドのネックレスが現れた。 「かわいい……」  燕は、思わず顔を綻ばせる。それを見た聖夜は、ふと思い立って、 「燕ちゃん、付けてあげよっか?」 と、穏やかに声を掛けた。 「えっ……!?」  燕の頬が、ほんのりと赤くなる。ネックレスを付けてもらえるのが嬉しかったのか、それとも照れくさかったのか……きっと、後者だろう。 「あっ、えっと……いいんですか?」 「もちろん!ネックレス貸して」 「は、はい」  燕はネックレスを聖夜に手渡し、彼に背を向ける。  聖夜は、燕の首にネックレスを掛け、留め具を止めようと手を動かす。  気になる相手の大きな手が、自分に触れられる距離にある。それだけのことで、燕の心臓の鼓動が早くなる。頬が、一気に熱くなる。  このうるさい胸の音がバレてしまわないか、この頬の熱が伝わってしまわないか、燕は気が気じゃなかった。 「よっし、できた!燕ちゃん、こっち向いていいよ」  しかし、聖夜は燕の乙女心には気づきもせず、明るい声で彼女を呼ぶ。  燕は、それに少し安堵しながら、深呼吸をして聖夜に振り返った。 「聖夜さん、似合いますか……?」  燕が尋ねると、聖夜はニカッと笑って頷いた。 「うん!バッチリ似合ってる」 「……ありがとうございます」  聖夜の言葉に、燕は、はにかみながら微笑んだ。 「ああ。翔太が帰ってきたら、翔太にも言ってあげてな」 「はい。もちろんです」
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