21 燕の記憶

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「確かに心配だけど……でも信じてるからさ。翔太は強いし、柊も強い。だから大丈夫だよ」 「信じてる……か」  燕はネックレスに触れて目を閉じた。 「お兄さんの無事を、私も信じます。早く会って、お礼が言いたいから」  燕はそう言うと、ゆっくり目を開いて穏やかな笑顔を見せる。 「うん!それがいいよ」  聖夜はそれに笑顔で応えた。  その時だった。 「強盗だ!捕まえて!」  商店街の方から悲鳴が聞こえた。  聖夜が向こうを見ると、公園の方にキャリーケースを抱えた男性が走ってくるのが目に入った。 「どけ!」  強盗犯は手から薔薇の枝を伸ばし鞭のように振い、通行人を退けながらこちらに迫ってくる。  聖夜はそれを止めようと体術の構えを取ろうとして……傍で呆然としている燕の存在を思い出した。 (俺一人なら戦える……けど、今は燕ちゃんがいる)  悩んだ末、聖夜は燕の手を引いた。 「燕ちゃん、逃げよう!」  しかし、燕の反応はない。 「燕ちゃん?」 「うっ……、薔薇の……人……!」  すると突然その場に崩れ落ち、頭を押さえてうずくまった。 「燕ちゃん?燕ちゃん!」 「う……うう……」  聖夜は何度も燕に声を掛けるが、燕からの返答はない。  聖夜達が動けないでいるうちに、強盗犯が迫る。 「……戦うしかない!」  聖夜は覚悟を決め、強盗犯の前に立ちはだかった。 「なんだ……お前も僕の邪魔をするのか?」  強盗犯は、聖夜を鋭く睨みつける。聖夜は、それに怯みそうになる気持ちを堪えて、言い放った。 「これ以上好きにはさせない!」 「邪魔するならお前も敵だ!」
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