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強盗犯はとげの生えた枝をしならせ、聖夜に襲いかかった。
「『加速』!」
聖夜はアビリティで枝を寸前で躱した。
(相手は人間だ。高次元生物じゃない……どう戦えばいいんだ……)
聖夜の迷いを感じ取り、強盗犯が口の端を釣り上げる。
「どうした?来ないのか?」
「く……」
「ハッ!意気地なしが!」
再び枝が勢いよく迫ってくる。聖夜は身軽にそれらを躱すものの、突破口が見いだせずにいた。
(だめだ、埒が開かない……)
ただ体力を消耗して、敵の攻撃を躱すことしかできない。そんな自分が情けなかった。
(こんなんだから、アビ課に受からなかったのかな……)
聖夜はただ、自分の甘さを痛感していた。
徐々に息が上がり始める。
「これで終わりだ!」
一瞬の隙を突かれ、聖夜の眼前にとげのある枝が迫った。
(しまった……!)
枝が聖夜の胸を貫こうとした、その時。
「飲み込め」
黒い闇が、枝を丸ごと飲み込んだ。
「な、なんだ……?」
「アビリティを私欲のために使っているのは、君かな?」
穏やかな、しかし、冷徹さも感じられる声。聖夜が声の主を振り返ると、見覚えのある金髪の少年が、野葡萄色の瞳を冷たく光らせながら立っていた。
「ノエル……!」
「縛れ」
ノエルの一言で闇は自在に動き、大蛇が巻き付くように強盗犯を縛り上げた。
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