21 燕の記憶

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 強盗犯はとげの生えた枝をしならせ、聖夜に襲いかかった。 「『加速』!」  聖夜はアビリティで枝を寸前で躱した。 (相手は人間だ。高次元生物じゃない……どう戦えばいいんだ……)  聖夜の迷いを感じ取り、強盗犯が口の端を釣り上げる。 「どうした?来ないのか?」 「く……」 「ハッ!意気地なしが!」  再び枝が勢いよく迫ってくる。聖夜は身軽にそれらを躱すものの、突破口が見いだせずにいた。 (だめだ、埒が開かない……)  ただ体力を消耗して、敵の攻撃を躱すことしかできない。そんな自分が情けなかった。 (こんなんだから、アビ課に受からなかったのかな……)  聖夜はただ、自分の甘さを痛感していた。  徐々に息が上がり始める。 「これで終わりだ!」  一瞬の隙を突かれ、聖夜の眼前にとげのある枝が迫った。 (しまった……!)  枝が聖夜の胸を貫こうとした、その時。 「飲み込め」  黒い闇が、枝を丸ごと飲み込んだ。 「な、なんだ……?」 「アビリティを私欲のために使っているのは、君かな?」  穏やかな、しかし、冷徹さも感じられる声。聖夜が声の主を振り返ると、見覚えのある金髪の少年が、野葡萄色の瞳を冷たく光らせながら立っていた。 「ノエル……!」 「縛れ」  ノエルの一言で闇は自在に動き、大蛇が巻き付くように強盗犯を縛り上げた。
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