67人が本棚に入れています
本棚に追加
ガタンと音を立てて、キャリーケースが地面に落ちる。
強盗犯は、強く巻き付かれて苦しそうに呻きながら、ぼやける視界にノエルを映した。
「ぐぅ……」
「さぁ、どう痛めつけてやろうか」
強盗犯の目に映ったノエルの眼差しは、恐ろしく冷酷だった。
「僕の『闇』は変幻自在。君を食い尽くすことも、貫くことも、握りつぶすこともできる」
一言一言から感じられる、鋭い嫌悪と殺意。少しでも対応を間違ったら殺される。そんな恐怖に支配された強盗犯の目から、ボロボロと涙が滴る。
「ひぃっ……!」
「ノ、ノエル……落ち着け」
聖夜もまた、ノエルのただならぬ雰囲気を感じ取り、彼をなだめようと声を掛けた。
聖夜は、強盗犯を止めるべきではあるものの、命を奪うべきではないと考えていたのだ。
「アビリティで他人を傷つけたんだ。それ相応の覚悟はあるんだろう?」
「す、すみません!命だけは!」
涙ながらに懇願する強盗犯だったが、ノエルは聞く耳をもたない。
「せめてもの慈悲だ。死に方を選ばせてあげるよ……!」
ノエルの瞳が、仄暗い輝きを増す。
「ひぃ……!いやだ、死にたくない!」
このままでは、ノエルは強盗犯の命を奪いかねない。これ以上は危険だと判断した聖夜は、ノエルの肩を強く掴んだ。
「ノエル!」
その時、サイレンの音が聞こえ始めた。
サイレンの音は大きくなり、やがてパトカーが公園に止まった。パトカーから降りた警察官が駆け足でこちらにやって来る。
「アビリティ課の職員だ。そいつが強盗犯だな……盗んだものは?」
「あ……、多分あれです……」
聖夜は地面に転がったキャリーケースを指さした。
警察がキャリーケースを拾い中身を開けると、中には宝石が何個も入っていた。
「中身は無事のようだな……」
最初のコメントを投稿しよう!