21 燕の記憶

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 ガタンと音を立てて、キャリーケースが地面に落ちる。  強盗犯は、強く巻き付かれて苦しそうに呻きながら、ぼやける視界にノエルを映した。 「ぐぅ……」 「さぁ、どう痛めつけてやろうか」  強盗犯の目に映ったノエルの眼差しは、恐ろしく冷酷だった。 「僕の『闇』は変幻自在。君を食い尽くすことも、貫くことも、握りつぶすこともできる」  一言一言から感じられる、鋭い嫌悪と殺意。少しでも対応を間違ったら殺される。そんな恐怖に支配された強盗犯の目から、ボロボロと涙が滴る。 「ひぃっ……!」 「ノ、ノエル……落ち着け」  聖夜もまた、ノエルのただならぬ雰囲気を感じ取り、彼をなだめようと声を掛けた。  聖夜は、強盗犯を止めるべきではあるものの、命を奪うべきではないと考えていたのだ。 「アビリティで他人を傷つけたんだ。それ相応の覚悟はあるんだろう?」 「す、すみません!命だけは!」  涙ながらに懇願する強盗犯だったが、ノエルは聞く耳をもたない。 「せめてもの慈悲だ。死に方を選ばせてあげるよ……!」  ノエルの瞳が、仄暗い輝きを増す。 「ひぃ……!いやだ、死にたくない!」  このままでは、ノエルは強盗犯の命を奪いかねない。これ以上は危険だと判断した聖夜は、ノエルの肩を強く掴んだ。 「ノエル!」  その時、サイレンの音が聞こえ始めた。  サイレンの音は大きくなり、やがてパトカーが公園に止まった。パトカーから降りた警察官が駆け足でこちらにやって来る。 「アビリティ課の職員だ。そいつが強盗犯だな……盗んだものは?」 「あ……、多分あれです……」  聖夜は地面に転がったキャリーケースを指さした。  警察がキャリーケースを拾い中身を開けると、中には宝石が何個も入っていた。 「中身は無事のようだな……」
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