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すると警察官が犯人に歩み寄り、闇の隙間から覗いていた手に手錠をかけた。それを見たノエルがアビリティを解除する。
「君達、ご協力ありがとう」
「いえ、俺は何も……」
聖夜は傍らのノエルを見たが、その表情は冷たいままだった。
(ノエル……一体どうしたんだろう……)
「とにかく、私は犯人を連行するから。君達も気をつけて」
「は、はい!」
「それじゃあね」
警察がその場を去り、聖夜とノエルはその場に取り残された。
聖夜は、冷酷な表情のまま遠くを見つめるノエルの顔を、心配そうに覗き込む。
「ノエル……その、大丈夫?」
「……ああ、平気さ」
ノエルは聖夜の方を見て微笑みを作った。しかし、目は全く笑っていない。
先程のノエルは、心の底が冷え込むような恐ろしい雰囲気だった。それこそ、人を殺すことすら厭わない意思を、敵ではなかった聖夜ですら感じたほどだ。
初めて会った時の、あの優しい微笑みからは想像できないほど……冷酷だった。
どちらが本当のノエルなのか。ノエルの目的は何なのか。
ノエルは……一体、何者なのか。
考えれば考えるほど、ノエルは謎に包まれている。
美しい向日葵色の金髪と、透き通った野葡萄色の瞳は、確かに綺麗だったが、その得体の知れない不気味さは拭えなかった。
それでも、聖夜は信じたかった。
あの日、初めて会った優しい少年が、本当のノエルだと。
聖夜はそこまで考えて、ふと、初対面の時に彼が落としていった髪飾りを思い出した。
「……あ!そうだ」
聖夜は上着のポケットに手を突っ込み、向日葵の髪飾りを取り出す。
「ノエル、この髪飾り落としてないか?」
聖夜がそれを差し出すと、ノエルの目が見開かれた。
「それは……!」
ノエルは慌てて髪飾りを手に取った。そして髪飾りが壊れていないかを入念に確かめ、胸をなで下ろした。
「君が拾ってくれたんだね。ありがとう……」
ノエルはさっきと打って変わって、心底安心したように微笑んだ。
「大事なものなんだ。もう見つからないかと思った」
「そっか……よかった」
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