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22 東日本支部
一方、翔太と柊は東日本支部に到着していた。
栃木県白峰町。その中央に位置する特部の建物は、中央支部に負けず劣らず立派だった。
玄関をくぐると、オペレーターの制服を着た、黒いショートヘアで丸眼鏡が似合う青年が、笑顔で迎えてくれた。
「2人とも、よく来てくれたね。東日本支部支部長の草谷陸です。よろしくね」
「宵月柊です。よろしくお願いします」
「風見翔太です。お久しぶりです」
翔太の言葉に草谷はにこりと頷く。それを見て、柊は不思議そうな顔をして翔太に尋ねる。
「久しぶりってことは、翔太君、東日本支部に来たことがあるの?」
「ああ、何度か任務でな。……あと、一応地元なんだ」
「え、そうなの!?」
翔太の返答に、柊は目を見開いた。
白峰町も、天ヶ原町と同様に大して都会では無い。それどころか、天ヶ原町より田舎のように感じられる。
東日本支部周辺にワープしてから、建物に着く道中で、柊は天ヶ原町にある商店街のような大きなアーケードも見つけられていなかった。それに、平日の昼間とはいえ、人通りも殆ど無い。
閑静な田舎町。それが柊が感じた白峰町の印象だ。
翔太は、柊が何故そんなに驚いているのか分からず、不思議そうに彼女を見る。
「別に驚くことじゃないだろう?なんで、そんなに驚いてるんだ」
「何だか意外だなって思ったの。翔太君は都会の人って感じだったから」
柊の言葉を聞いて、翔太は少し不愉快そうに顔をしかめる。
「……ここが田舎だって言いたいのか?」
「うん……だって、田舎だよね?天ヶ原町よりも静かじゃん」
柊は翔太の様子を気に留めず、素直な感想を口にした。正直で裏表がないのは柊の長所だが、ハッキリとしすぎた物言いをしてしまう点は、短所とも捉えられるかもしれない。
翔太は柊に対して反論しようと口を開く。しかし、翔太が何か言う前に、草谷がそれを制止した。
「はいはい、そこまで。2人には援助に来てもらったんだから」
困ったように笑う草谷を見て、2人は慌てて頭を下げた。
「すっ、すみません……」
「……気をつけます」
「よろしい。……とりあえず、2人についてきてほしい所があるんだ。いいね?」
2人は頷き、草谷の後に続いて廊下を歩いていった。
「……ここだよ」
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