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柊もそれに頷き、辺りを注意深く見渡した。しかし、相変わらず不自然な所は見当たらない。
(こんなに探しても何もないってことは、やっぱり高次元生物?それとも……誰かが?)
考え込む柊と、しかめっ面の翔太を見かねた鈴は、2人をリラックスさせようと、努めて明るく声をかけた。
「少し休憩にしようか。肩の力を抜こう」
鈴はそう言いながら近くの自販機でオレンジジュースを買うと、2人に投げ渡した。
「私の奢りね」
「あ、ありがとうございます……」
柊はお礼を言ってオレンジジュースを飲んだ。柑橘系の爽やかな味が、柊の口いっぱいに広がる。
思いの外喉が渇いていたのか、小さな缶の中身はあっという間に空になってしまった。傍らの翔太も同じようだった。
「2人とも緊張しすぎだよ。特に翔太君。ずっと顔をしかめて……久しぶりの故郷なのに」
鈴の言葉に対して、翔太は自販機の脇にあるゴミ箱に缶を捨てながら、ため息混じりに答える。
「一応任務で来てるんですから、浮かれてられませんよ」
その堅苦しい様子を見て、鈴はヤレヤレと苦笑いした。
「相変わらず真面目だな~。何か良い思い出を思い出したりしないの?初恋の人とかさ」
「初恋の人!?」
大好きな恋バナを期待し、目を輝かせる柊を見て、翔太は思わずため息をつく。
「そんな思い出ありませんよ」
「つれないな~……楽しかったこととかでもいいからさ、聞かせてよ。気になるよね、柊ちゃん?」
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