22 東日本支部

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「はい!聞きたいです!」 「はぁ……2人が期待してるような話じゃないかもしれないが……」  翔太は空を見上げて口を開いた。 「昔の家の近くに高台公園があってな。父さんと燕と、よく天体観測をしてた。あの頃は楽しかったな……」 「天体観測か……いいな」  父と妹と天体観測。父との思い出が殆どない柊には羨ましい話だった。  少し寂しそうに下を向く柊を見て、翔太はすぐに声を掛ける。 「柊。天体観測、興味あるか?」  翔太に尋ねられ、柊は顔を上げて答える。 「うん、ちょっとね」 「任務が終わったら案内する」 「いいの?」 「ああ。約束だ」  翔太はそう言うと、少しだけ目を細める。その優しげな表情は、大切な妹に向けるものと同じだった。  その表情を見た、鈴はにやりと口角を上げる。 「あの翔太君が女の子をお出かけに誘うなんて……大人になったね」 「なっ……!」  鈴に揶揄われ、翔太は慌てて柊から目を逸らした。その頬は、赤く火照っているように見える。  柊に対して、特別な気持ちを抱いている訳ではない。寧ろ、彼女は翔太にとって妹のような存在だった。素直で行動的な彼女は、記憶を失くす前の燕によく似ていたのだ。  だからか、翔太は柊を放っておけなかった。今だってそうだ。寂しそうな顔をする柊を元気づけてやろうと思って、つい、らしくないことを口走った。  柊は仲間だ。男女のあれこれなんて関係なく……大事な仲間だ。翔太はそう自分に言い聞かせ、大きく息をを吐いた後に、鈴に反論する。 「……子供扱いしないでください。あと、誤解の無いように言っておきますが柊は仲間です。……そんなんじゃありませんから」 「分かってるよ~」  翔太の気持ちを見抜いているのか、それとも単に面白がっているのか、鈴は楽しそうな笑顔を見せた。  柊はというと、翔太が照れていることが面白くて、クスクスと笑っている。柊は、鈴の言葉が冗談であることも知っているし、真面目な翔太が、大したこともない揶揄いに照れてしまうことも、この数ヶ月で理解していた。  柊が翔太に抱いている好意もまた、恋愛のものではなく、仲間に対する信頼にあたるものだったのだ。  2人の表情から、緊張の色が消える。鈴のお陰で、張り詰めていた気持ちが多少ほぐれたようだ。  鈴はそれに満足して、調査を再開しようと2人に声をかけようとした。  その時。 「助けて下さい!」  長い薔薇色の髪をした少女が、3人の元へ駆け寄ってきた。 「向こうで高次元生物が!」  少女の言葉に、鈴は顔色を変える。 「ほんとに!?案内してくれる?」 「はい!こっちです!」  走る少女の後を追いかけて、3人は走り出した。 * * *   少女に案内されて辿り着いたのは路地裏だった。しかし、高次元生物の姿はない。
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