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琴森に連れられて、聖夜と柊は談話室を訪れた。
「失礼します……」
談話室の中には、黒い制服を着て、青いマントを身につけた5人の少年少女が、中心の丸いテーブルを囲んで座っていた。彼らは聖夜たちに気が付くと、各々2人の様子を窺う。
「紹介するわね。こちらは宵月聖夜君と宵月柊さん。新しく中央支部に加わった隊員よ」
「よ、よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします」
2人はそれぞれお辞儀する。
「さ、みんなも自己紹介して」
「では僕から」
室内にも関わらずマフラーをつけた、端正な顔立ちをしている先程の銀髪の少年が立ち上がり、柔和な笑みを浮かべた。
「僕は中央支部リーダー、北原白雪。アビリティは『氷雪』。よろしくね」
「よろしくお願いします!……ところで、何でマフラーしてるんですか?ここ、建物の中だし、もう春なのに……」
聖夜が尋ねると、白雪は柔和な笑みを崩さずに答えた。
「高能力症候群……HASを患っていてね。能力の制御が人より苦手なんだ。だから室内でもマフラーを着けていないと寒いんだよね」
「HAS……?」
聖夜は首を傾げる。すると、柊が横からフォローを入れた。
「High Ability Syndromeの略だよ。強いアビリティを持つ代わりに、体へのダメージが大きいの」
「ああ、なるほど……」
白雪は、納得した様子の聖夜に微笑み、隣に座っていた若葉色の少女を視線で促した。彼女は少し頬を染めながら頷き、聖夜と柊に向き直って口を開く。
「次は私ね。美ヶ森花琳です。アビリティは『植物』よ。よろしくね、2人とも」
「花琳さん……よろしくお願いします」
柊が挨拶すると、花琳は優しげなタレ目を細めて穏やかに微笑んだ。
「はいはーい!次あたしな」
花琳の隣に座った、紺色のポニーテールの元気な少女が名乗り出た。
「あたしは美ヶ森海奈。アビリティは『水』!よろしくな。気軽に海奈って呼んでくれ」
「ああ……海奈、よろしくな!」
聖夜が明るく頷くと、海奈は嬉しそうに笑った。聖夜の傍らにいる柊も、海奈の気さくな様子に微笑んでいる。
とても明るい雰囲気だったが……海奈が自己紹介を終えると、部屋が静かになってしまった。
「……2人とも、自己紹介しなよ!」
海奈が苦笑いしながらそう言うと、明るい茶髪で、長い前髪の少年がぼそぼそと言った。
「……海透深也。アビリティは『透明化』。……よろしく」
「ああ、よろしくな」
聖夜が笑いかけると深也は目をそらした。人見知りなのだろうか。
「……それで、君は?」
柊が残りの少年に声をかけると、少年は2人を睨みつけた。
小柄で、少し長い翡翠色の髪を一纏めにした、一見すると少女のように見える、先程自分達を助けてくれた少年。しかし、その迫力に聖夜は少し身構える。
「……お前達、特部を知らなかったんだろ」
「あ、ああ……」
「そんな奴らを仲間として受け入れるのは難しい」
聖夜が助けを求めて琴森を見ると、彼女はやれやれと額に手を当てていた。
「ここに居る隊員は、みんな特部がどんな組織か知っていて、戦う覚悟を持って入隊した人ばかりなんだ。……お前達みたいな、戦う覚悟があるかも分からない奴、俺は認めない」
そう言う少年を柊は思い切り睨み返す。
「さっきから黙って聞いてれば何なの?確かに特部のことは知らなかったけど、憶測で私達を判断しないでくれるかな?」
「お、おい柊……」
慌てて制止に入る聖夜を、柊は遮った。
「君は知らないかもしれないけど、私達、誰かを守るためにアビリティ課の試験を受けたの。それで、戦闘試験は突破してる。戦う覚悟も、戦う力だって持ってるの。なのに、それを知らずにずけずけと……。思い込みで相手を判断するの、人としてどうかと思うけど」
柊の言葉に、彼の眉がピクリと動く。
「なんだと……」
「文句があるなら、私達のことを知ってから言って。強さの証明が必要なら、今ここで君のこと倒したっていいけどね」
「俺を倒すだと?2人がかりで高次元生物を倒しきれなかったお前が?笑わせるな」
徐々にヒートアップしていく2人の様子に、周りの隊員も戸惑いの表情を浮かべる。
「ひ、柊……落ち着けよ。俺達、喧嘩しに来たんじゃないだろ?」
「でも……!」
その時、突如サイレンが鳴り響いた。
『天ヶ原商店街に高次元生物が発生しました!中央支部、直ちに出動して下さい』
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