3 運命の分かれ目

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 琴森に連れられて、聖夜と柊は談話室を訪れた。 「失礼します……」  談話室の中には、黒い制服を着て、青いマントを身につけた5人の少年少女が、中心の丸いテーブルを囲んで座っていた。彼らは聖夜たちに気が付くと、各々2人の様子を窺う。 「紹介するわね。こちらは宵月聖夜君と宵月柊さん。新しく中央支部に加わった隊員よ」 「よ、よろしくお願いします!」 「よろしくお願いします」  2人はそれぞれお辞儀する。 「さ、みんなも自己紹介して」 「では僕から」  室内にも関わらずマフラーをつけた、端正な顔立ちをしている先程の銀髪の少年が立ち上がり、柔和な笑みを浮かべた。 「僕は中央支部リーダー、北原白雪(きたはらしらゆき)。アビリティは『氷雪』。よろしくね」 「よろしくお願いします!……ところで、何でマフラーしてるんですか?ここ、建物の中だし、もう春なのに……」  聖夜が尋ねると、白雪は柔和な笑みを崩さずに答えた。 「高能力症候群……HASを患っていてね。能力の制御が人より苦手なんだ。だから室内でもマフラーを着けていないと寒いんだよね」 「HAS……?」  聖夜は首を傾げる。すると、柊が横からフォローを入れた。 「High Ability Syndromeの略だよ。強いアビリティを持つ代わりに、体へのダメージが大きいの」 「ああ、なるほど……」  白雪は、納得した様子の聖夜に微笑み、隣に座っていた若葉色の少女を視線で促した。彼女は少し頬を染めながら頷き、聖夜と柊に向き直って口を開く。 「次は私ね。美ヶ森花琳(みがもりかりん)です。アビリティは『植物』よ。よろしくね、2人とも」 「花琳さん……よろしくお願いします」  柊が挨拶すると、花琳は優しげなタレ目を細めて穏やかに微笑んだ。 「はいはーい!次あたしな」  花琳の隣に座った、紺色のポニーテールの元気な少女が名乗り出た。 「あたしは美ヶ森海奈(みがもりみな)。アビリティは『水』!よろしくな。気軽に海奈って呼んでくれ」 「ああ……海奈、よろしくな!」  聖夜が明るく頷くと、海奈は嬉しそうに笑った。聖夜の傍らにいる柊も、海奈の気さくな様子に微笑んでいる。  とても明るい雰囲気だったが……海奈が自己紹介を終えると、部屋が静かになってしまった。 「……2人とも、自己紹介しなよ!」  海奈が苦笑いしながらそう言うと、明るい茶髪で、長い前髪の少年がぼそぼそと言った。 「……海透深也(かいとうしんや)。アビリティは『透明化』。……よろしく」 「ああ、よろしくな」  聖夜が笑いかけると深也は目をそらした。人見知りなのだろうか。 「……それで、君は?」  柊が残りの少年に声をかけると、少年は2人を睨みつけた。  小柄で、少し長い翡翠色の髪を一纏めにした、一見すると少女のように見える、先程自分達を助けてくれた少年。しかし、その迫力に聖夜は少し身構える。 「……お前達、特部を知らなかったんだろ」 「あ、ああ……」 「そんな奴らを仲間として受け入れるのは難しい」  聖夜が助けを求めて琴森を見ると、彼女はやれやれと額に手を当てていた。 「ここに居る隊員は、みんな特部がどんな組織か知っていて、戦う覚悟を持って入隊した人ばかりなんだ。……お前達みたいな、戦う覚悟があるかも分からない奴、俺は認めない」  そう言う少年を柊は思い切り睨み返す。 「さっきから黙って聞いてれば何なの?確かに特部のことは知らなかったけど、憶測で私達を判断しないでくれるかな?」 「お、おい柊……」  慌てて制止に入る聖夜を、柊は遮った。 「君は知らないかもしれないけど、私達、誰かを守るためにアビリティ課の試験を受けたの。それで、戦闘試験は突破してる。戦う覚悟も、戦う力だって持ってるの。なのに、それを知らずにずけずけと……。思い込みで相手を判断するの、人としてどうかと思うけど」  柊の言葉に、彼の眉がピクリと動く。 「なんだと……」 「文句があるなら、私達のことを知ってから言って。強さの証明が必要なら、今ここで君のこと倒したっていいけどね」 「俺を倒すだと?2人がかりで高次元生物を倒しきれなかったお前が?笑わせるな」  徐々にヒートアップしていく2人の様子に、周りの隊員も戸惑いの表情を浮かべる。 「ひ、柊……落ち着けよ。俺達、喧嘩しに来たんじゃないだろ?」 「でも……!」  その時、突如サイレンが鳴り響いた。 『天ヶ原商店街に高次元生物が発生しました!中央支部、直ちに出動して下さい』
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