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柊のアビリティが切れると、アリーシャは毒針を振り下ろした……が、そこにいるはずの鈴がいないことに気がつき、動揺した。
「どういうことなの……!?」
翔太はその一瞬の隙を見逃さなかった。
「『突風』!」
アリーシャは激しい風に吹き飛ばされ、壁に打ち付けられた。
「く……『毒針』!」
アリーシャは負けじと、先程と同様に毒針を放つ。
「させないよ!」
それに対抗すべく、鈴はフルートを吹き始めた。緑色の音塊が、毒針を全て相殺する。不測の事態の連続に、アリーシャは思わず頭を掻きむしった。
「毒が消えて、攻撃も通らない……いいわ」
アリーシャは、小さな白いキューブを取り出した。
「あなた達の大好きなあれを出してあげる!」
アリーシャはそう叫んで、キューブを手放した。キューブは地面に落ちると、激しく光り輝く。
「何だ……!?」
光が収まり、翔太が目を開けると、そこにアリーシャの姿は無かった。
その代わりに、転送されたのであろう薔薇の頭をした高次元生物が現れた。
「お前……は……!」
それの体は緑色で腕の代わりにとげのある枝が伸びている。
その全身の隅々までを視界に入れ……翔太は目を見開いた。
この高次元生物を、翔太はよく知っていたのだ。
「父さんと母さんを殺した、高次元生物ッ!!」
翔太の脳裏に、あの日の出来事が蘇る。
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