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「……どうして連絡してくれなかったんだ」
「色々あって忘れてて……」
じっとりとした視線を向ける大地に対して、鈴は苦笑いした。
『みんな、合流できたね?』
草谷の言葉に鈴は頷き尋ねる。
「草谷さん、あの高次元生物の弱点は……」
『末端部分は攻撃しても再生されてしまう。だから急所である頭を切り落として倒して』
「分かりました」
高次元生物は結の糸に反応し、彼女を貫こうととその枝を伸ばした。
「『壁』……!」
大地が地面を殴ると大きな灰色の壁が現れ、その攻撃を防いだ。
「わしも行くぞ!『針』じゃ!」
忍は数本の針を生み出し、高次元生物に放った。
針が枝に突き刺さり、高次元生物が痛そうに悶える。その様子を見て、忍は目を見開き高笑いした。
「痛かろう!わしの針は鋭いからな!」
「翔太君!枝は私達に任せて!」
鈴の声に、翔太はしっかりと頷き前へ駆け出した。
高次元生物との距離が縮まる。翔太は右腕をその薔薇の頭に伸ばした。スラリと伸びた指の1本1本が、憎き赤い薔薇を捉える。
「決める……!『かまいたち』!」
右手から放たれた風の刃が命中し、高次元生物の頭がバサリと切り落とされた。
真っ赤な薔薇の花びらが辺りに舞い散る。切り離された体も力無く崩れ落ちた。
「やった……のか」
『高次元生物の反応消滅。……みんな、よくやったね』
「……父さん、母さん、やったよ」
翔太は小さく呟き、遂に仇を打ち倒したことを実感し、拳を握りしめた。
「翔太君、やったね!」
鈴が翔太に駆け寄り、笑顔を見せる。その嬉しそうな顔を見て、翔太も表情を緩ませる。
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