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医務室の中には本来中央支部にいるはずの清野がいた。
「おや、翔太君に柊さんではないか。任務は終わったのかな?」
「はい……清野さんはどうしてここに?」
「応援要請があってね。毒に侵された人達の回復を行ってたんだよ」
翔太がベッドの方を見ると、毒で苦しんでいた人々がすやすやと眠っていた。
「それで、君達はどうしてここに?」
「柊を診てもらえませんか?アビリティの使いすぎで任務中に倒れてしまって……」
「アビリティ使いすぎで……分かった。そこの空いているベッドで診よう」
翔太は一番端のベッドに柊を横たえると、後ろを向いた。
「おや、紳士だね」
「女子ですから。変な所を見たなんて疑いをかけられても困りますし」
「ふむ……では始めようか」
清野は柊を診察し始めた。
まず、手早く首に下げた聴診器を耳につけ、心音を確認する。しかし異常は見られなかった。
(内蔵に異常は無さそうだ。今は顔色も悪くない。それに、柊さんは貧血持ちでも無かったはずだ。なら、一体何が原因で……)
清野は頭の中で柊のカルテを詳細に思い出しながら、翔太に質問を投げかける。
「アビリティの使いすぎと言っていたけど、柊さんはそんなに敵を『遅延』させていたのか?」
「いや……『遅延』は使っていませんでした。それより数段レベルの高い……『停止』や『巻き戻し』を使って、倒れたんです」
「なるほど……倒れるのは今日が初めてかな?」
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