22 東日本支部

14/17
前へ
/232ページ
次へ
「いや……特部として初めての任務の時も倒れてましたし、海奈と深也と出た任務でも立てなくなってました」 「そうか……うむ……」  清野は柊の服を戻しながら、関連しそうな病名を脳内で探る。 (……過労か。それとも、急性の疾患か……。現段階では判別ができない。そもそも、柊さんがアビリティを使って倒れるのは慢性的なものなのか?それとも疲れによる偶然か?)  清野は右手を顎につけ、長考する。しかし、彼女は内科の専門医ではない。特殊施設医務員を務めるための幅広い知識はあれども、診断を下すだけの力は無かった。  だが、彼女の脳裏に、嫌な予感が過ぎる。 (翔太君の話から思い当たるものがあるとすれば、アビリティ細胞の、急性疾患…………) 「清野さん?」  黙り込んでしまった清野を不審に思い、翔太が声を掛ける。それに気が付き、清野はハッとして返事をした。 「ああ……もうこっちを見ても大丈夫だぞ」  清野にそう言われて、翔太は振り返った。 「今は疲れて眠っているだけだが、話を聞く限り、何らかの病気である可能性もある」 「病気……ですか」 「ああ。ただ、私は専門医では無いのでね。断言はできない。……私の杞憂だと良いのだが、気にかけてあげてくれないか」 「……分かりました」  翔太が頷くのを確認し、清野は軽く息を吐き、肩の力を抜いた。 (私の杞憂であって欲しいものだ。本当に……)  清野は一抹の不安を誤魔化すように、普段通りの平然とした表情を心掛けて翔太に尋ねた。 「さて、私は中央支部に帰るが、君はどうする?」 「柊の目が覚めるのを待ちます」  翔太の言葉に、清野は目を丸くした。 「それでも良いが、もう日が暮れるぞ?」 「別に平気です。ワープパネルですぐ帰れますから」  翔太はそう言うと、不安げな眼差しで眠っている柊を見つめる。その、大切なものが壊れないか心配しているような眼差しに、清野は思わず優しく目を細めた。 「そうか。では私から琴森に伝えておこう」 「よろしくお願いします」 「それじゃあ、気をつけるんだぞ」  そう言うと、清野は医務室を出て行った。 「……俺も座るか」  翔太は近くの椅子に腰掛けながら、柊が目覚めるのを待つことにした。 * * * 「……うーん」  柊が目を覚ますと、時計の針は午後8時を指していた。 「8時……8時!?」 「あ、起きたか」 「翔太君!ごめんね、私寝ちゃってたみたいで……」
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加