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「いや……特部として初めての任務の時も倒れてましたし、海奈と深也と出た任務でも立てなくなってました」
「そうか……うむ……」
清野は柊の服を戻しながら、関連しそうな病名を脳内で探る。
(……過労か。それとも、急性の疾患か……。現段階では判別ができない。そもそも、柊さんがアビリティを使って倒れるのは慢性的なものなのか?それとも疲れによる偶然か?)
清野は右手を顎につけ、長考する。しかし、彼女は内科の専門医ではない。特殊施設医務員を務めるための幅広い知識はあれども、診断を下すだけの力は無かった。
だが、彼女の脳裏に、嫌な予感が過ぎる。
(翔太君の話から思い当たるものがあるとすれば、アビリティ細胞の、急性疾患…………)
「清野さん?」
黙り込んでしまった清野を不審に思い、翔太が声を掛ける。それに気が付き、清野はハッとして返事をした。
「ああ……もうこっちを見ても大丈夫だぞ」
清野にそう言われて、翔太は振り返った。
「今は疲れて眠っているだけだが、話を聞く限り、何らかの病気である可能性もある」
「病気……ですか」
「ああ。ただ、私は専門医では無いのでね。断言はできない。……私の杞憂だと良いのだが、気にかけてあげてくれないか」
「……分かりました」
翔太が頷くのを確認し、清野は軽く息を吐き、肩の力を抜いた。
(私の杞憂であって欲しいものだ。本当に……)
清野は一抹の不安を誤魔化すように、普段通りの平然とした表情を心掛けて翔太に尋ねた。
「さて、私は中央支部に帰るが、君はどうする?」
「柊の目が覚めるのを待ちます」
翔太の言葉に、清野は目を丸くした。
「それでも良いが、もう日が暮れるぞ?」
「別に平気です。ワープパネルですぐ帰れますから」
翔太はそう言うと、不安げな眼差しで眠っている柊を見つめる。その、大切なものが壊れないか心配しているような眼差しに、清野は思わず優しく目を細めた。
「そうか。では私から琴森に伝えておこう」
「よろしくお願いします」
「それじゃあ、気をつけるんだぞ」
そう言うと、清野は医務室を出て行った。
「……俺も座るか」
翔太は近くの椅子に腰掛けながら、柊が目覚めるのを待つことにした。
* * *
「……うーん」
柊が目を覚ますと、時計の針は午後8時を指していた。
「8時……8時!?」
「あ、起きたか」
「翔太君!ごめんね、私寝ちゃってたみたいで……」
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