22 東日本支部

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「気にするな。それより、他にも患者がいる。静かにした方がいい」 「あ、ごめん……」  翔太に静かに諭され、柊は慌てて手で口を塞ぐ。 「……体の調子はどうだ?」 「うん……もう大丈夫みたい」 「そうか……よかった」  翔太はそう言うと、優しく微笑んだ。  少しつり目がちな目が、優しく細められている。長い睫毛も相まって、その表情は男子とは思えないほど綺麗だった。 (あ……翔太君って、こんな風に笑うんだ……)  柊が見とれていると、翔太は怪訝そうな顔をする。 「どうかしたか?」 「あ、ううん……何でもない」  柊は、自分が感じた気持ちにそっと蓋をし、首を横に振った。  それを見た翔太は、柊の気持ちの変化に気づかずに、彼女に質問を重ねる。 「ならいいんだが。……あ、そうだ。柊、約束覚えてるか?」 「約束……?」 「天体観測」 「ああ、うん。覚えてるよ」  柊が頷くと、翔太は少し目を逸らしながら、彼女に尋ねる。 「ち、丁度夜だし……今から見に行かないか?」  翔太の顔が、ほんのりと赤くなる。逸らされた目は、少し伏せ目がちで、睫毛の長さが際立って美しい。翔太の照れた表情も、柊にはとても綺麗なものに見えた。 (翔太君、やっぱり美人だな……)  柊が再び翔太に見とれて黙っていると、翔太は不安げに柊を見つめた。 「やっぱり、難しいか?体調が悪いなら、今日は無理しないで帰った方が……」  翔太に尋ねられ、柊は慌てて首を横に振った。 「あ、ううん!平気だよ。元気いっぱい!」  柊はベッドから降りて、翔太に明るく笑いかけた。 「天体観測、一緒に行こ!」 * * *  2人は街灯に照らされた道路を歩いた。住宅街はどの家も明かりがついており、窓の開いた家からは時折談笑する声が漏れ聞こえてきた。 「こっちだ」  翔太は迷わずに柊の前を進んだ。柊もその後に続く。
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