22 東日本支部

17/17
前へ
/232ページ
次へ
 きょとんとした様子の柊に対して、翔太は真面目な顔で続けた。 「倒れたの、今日が初めてじゃないだろ。聖夜にも言ったことがあるが、お前達双子は自分を犠牲にしすぎだ。自己犠牲が過ぎると、救える命も救えなくなるんだぞ」  翔太の真剣な眼差しが、柊に向けられる。 「あ、ごめん……」  申し訳なさそうに俯く柊に対して、翔太は優しい声色で続ける。 「……柊が倒れたら、聖夜も俺も、みんなが心配するんだ。だから、これ以上無茶しないって約束してくれ」  翔太の、まるで家族に向けるような穏やかな声。その声で諭された柊には、彼が自分の身を案じてくれているのが、すぐに分かった。 (……心配、してくれてるんだよね)  翔太の思いやりに胸を暖かくしながら、柊は彼に向かって微笑んだ。 「……うん。分かった」  柊が頷いたのを確認して、翔太は優しく目を細めて立ち上がった。 「あまり遅い時間になっても危ないし、そろそろ戻るか」 「そうだね」  階段を降りようとしたその時、翔太のスマホが鳴った。 「……聖夜からだ」  画面をタップしてメッセージを開くと、その内容に翔太は言葉を失った。 「嘘だろ……」 「どうかしたの?」 「燕の記憶が、戻ったらしい」 「え!?」 「早く戻って、燕に会いに行かないと……!」  翔太は慌てて階段を駆け下りた。 「あ、ちょっと!翔太君!もう病院閉まってるよ!」  柊も慌ててその後を追いかけた。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加