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きょとんとした様子の柊に対して、翔太は真面目な顔で続けた。
「倒れたの、今日が初めてじゃないだろ。聖夜にも言ったことがあるが、お前達双子は自分を犠牲にしすぎだ。自己犠牲が過ぎると、救える命も救えなくなるんだぞ」
翔太の真剣な眼差しが、柊に向けられる。
「あ、ごめん……」
申し訳なさそうに俯く柊に対して、翔太は優しい声色で続ける。
「……柊が倒れたら、聖夜も俺も、みんなが心配するんだ。だから、これ以上無茶しないって約束してくれ」
翔太の、まるで家族に向けるような穏やかな声。その声で諭された柊には、彼が自分の身を案じてくれているのが、すぐに分かった。
(……心配、してくれてるんだよね)
翔太の思いやりに胸を暖かくしながら、柊は彼に向かって微笑んだ。
「……うん。分かった」
柊が頷いたのを確認して、翔太は優しく目を細めて立ち上がった。
「あまり遅い時間になっても危ないし、そろそろ戻るか」
「そうだね」
階段を降りようとしたその時、翔太のスマホが鳴った。
「……聖夜からだ」
画面をタップしてメッセージを開くと、その内容に翔太は言葉を失った。
「嘘だろ……」
「どうかしたの?」
「燕の記憶が、戻ったらしい」
「え!?」
「早く戻って、燕に会いに行かないと……!」
翔太は慌てて階段を駆け下りた。
「あ、ちょっと!翔太君!もう病院閉まってるよ!」
柊も慌ててその後を追いかけた。
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