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23 逃走
* * *
「はぁっ……はぁっ……」
「逃がすな。捕まえろ」
水色のシャツワンピースを着た、1人の少女が、薄暗い病院の中を走っていた。黄色いリボンでサイドテールにした長い茶髪が、少女が走る度に靡く。そして、その後を追いかけるのは、大勢の白い制服に身を包んだ兵士だった。
「『発砲』」
「うっ……」
敵の手から放たれた銃弾が、少女の腕に当たった。少女はあまりの痛さに腕を押さえるが、足は止めない。
(逃げなきゃ……逃げて、あの人に会わなきゃ!)
少女は傷をかばいながら、出口を目指して走り続けた。
(もう少し……もう少しで外に出られる!)
やがて、目の前に裏口が見えてきた。安堵するのも束の間、兵士達が迫り来る。
(急がなきゃ!)
少女は力を振り絞り、走るスピードを上げた。そして裏口から勢いよく外に出た。
少女の眼前に広がるのは満天の星空。辺りはすっかり暗くなっていた。
(もう夜なんだ……。急いで会いに行かないと……)
少女は疲れた体に鞭を打ち、夜の道を走り抜けた。
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