7068人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめん、つぐみ…俺…」
「拓也にとって今日はゲームの発売日だった…ってことだよね」
「ごめん…本当にごめん…明日…遅番か…あぁーつぐみ…」
「いいよ…とにかく今日はあと4時間もないし…おめでとうって気分でもないし…」
お皿もいいや、パックからそのまま食べちゃおう。フォークを持ちケーキが2個入ったパックを開けると
「えっ?そのまま?俺も…コンビニのケーキでもいいから一緒にお祝いしようよ」
拓也のその言葉にフォークを持つ手が震えた。コンビニのケーキでもいいから?それを拓也が言うの?私は震える手でフォークをケーキに突き立てると
「これあげる」
そう言いコンビニに行った時に持っていた小さなバッグを掴んで部屋を飛び出した。
「つぐみっ!待ってっ」
後ろから声はするが今は拓也の顔を見たくない。2年間一緒に暮らしていて初めての気持ち…ううん、その前1年間の交際期間を含めても初めての気持ちに自分でも戸惑っているのがわかる。こんな時間に行くあてもなく、ただ足早に歩き続けた。
「つぐみ…?」
聞き覚えのある声に呼ばれた気がするが気のせいだろう。だってもう9時半くらいだと思う。こんな時間に
「つぐみ…おい、つぐみ!お前無視すんなよっ」
「呼び捨てもお前呼びも…年下のくせに偉そうなのよ、佐伯稜牙(さえきりょうが)」
走り寄って来た男と、昼間の会社と同じやり取りをしてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!