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稜牙は駅前の居酒屋で夕食を買って来てくれたという。6時開店のその居酒屋は平日に限り開店から1時間だけ入口横で、唐揚げなどを販売している。
「美味しそう。急にお腹減ってきちゃった」
「米は冷凍してあったよな?」
「うん、ちょっと待ってね。私は焼きそばがあるならご飯はいらないな」
テーブルに料理を広げてくれる彼のご飯を解凍しながら
「野菜あったっけ?トマトだけ切る?」
「ポテトサラダがあるけど少なめだから切って」
「はーい」
「何もするなと言ったのに悪い」
「ふふっ…こんなの‘する’うちに入らないよ」
ああ…本当に彼のことが好きだという想いが胸に広がるのを感じる。
「…つぐみ?やっぱり具合悪い?泣くほどつらい?」
そう言われ自分が涙を流していることに気づいた。
「あははっ、トマトが目に染みた」
「あり得ねぇ…」
「稜牙のこと本当に大好きだなって思っていただけ…そしたらジュワっと胸が熱くなった」
「つぐみ」
低い声で私を呼び、隣まで来た稜牙は私の頭に顎を乗せた。
「飯の直前に可愛いこと言うの禁止」
「顎カクカク痛いって…稜牙、そこで話さないでよ」
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