第1章 つぐみ×拓也

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第1章 つぐみ×拓也

「ただいま」 部屋にいるのはわかっているのに返事がないのは寂しく感じる。一緒に暮らし始めた頃はこうじゃなかったんだけど…このところ朝晩、部屋にいる間に必ずそう思うようになってしまった。2年も一緒に暮らせば皆こんな感じなのかな… 玄関からすぐの洗面所で手を洗って部屋に入り 「ただいま」 もう一度言いながら、彼の目の前に手を伸ばして振る。 「あっおかえり、つぐみ」 拓也はゲームをしているテレビの画面から一瞬私に目をやり言うと、すぐに画面に視線を戻して 「ここ…キリのいいところで飯手伝うよ」 といつものセリフを言った。ヘッドホンを着けてる拓也に返事はいらない。キリがいいところは10分でくる時もあれば1時間かかる時もあるとわかっているから。 部屋着に着替え冷蔵庫を開ける。今日はもやしで焼きそばと…ワカメの玉子スープでいいか。人参を細切りにし、焼きそばにもスープにも入れよう。焼きそばのソースの香りが部屋に漂い始めて、やっと拓也がキッチンに来た。 「うーん、食欲をそそられる匂いだ」   彼は私を後ろから抱きしめるようにしてフライパンを覗き込むと、すぐに皿を二枚出してくれる。もう出来上がった焼きそばは彼に任せ、私はスープに少しのゴマ油を垂らし香り付けをして仕上げた。
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