53人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「そうだっけ......」
優弥は何か言葉を言おうにも、それ以上何も言えなかった。
最初こそメールは来なかったが、今は少なくとも1日に1回、多くて何十回とやりとりをする。電話や会うことばかりだったら、気づかないこともあった。
それを知るのが楽しくて、茜とメールのやりとりが楽しくて、今日まで連絡を取ってきた。
同時に、いつの間にか期限のことなんて忘れていた。
どうしたら、茜ともっとやりとりできるか。そればかりを考えてきた。
しかしそれは期間限定のことだということを、茜から言われるまで忘れていた。
「はい。なので、勝負の結果を決めたいです」
凛としたまっすぐな茜の言葉に、優弥はこれ以上話を引き伸ばせないと思い、茜の言葉を待つ。
「優弥さんはどうですか?」
「俺は、もっと茜のこと知りたくなった。パイロットの茜じゃなくて、もっと普通の茜のことを知りたい」
「普通の私、ですか」
「そう。普通の茜を知りたい」
「自衛官の私も私です」
間違えた。
そう思った瞬間から、優弥は茜に何も言えなくなった。
茜が言ったことに間違いはない。
優弥の選んだ言葉が間違っていただけだ。
「私の職業は自衛官ですが、普通の人間です」
何て言ったら良いかわからない。適当な言葉で返してはいけないことだけは直感的に悟った。
「それに」
茜は何か言いにくそうに一度口を開いてから、また閉じる。自分の感情をココアと一緒に飲み込んでから、再び優弥に言葉を投げた。
最初のコメントを投稿しよう!