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「ただ今より、ブルーインパルスによる展示飛行を行います」
会場にアナウンスが入った。
青いフライトスーツに身を包んだ茜が真剣な表情で並んでいる。同じく青いフライトスーツを来ている男性パイロットと見比べても、華があるし、負けていない。
パイロットたちは、それぞれの機体に乗り込み、エンジンをかける。
1番機から順にゆっくりとエプロンに向かい、飛び立つ準備をしている。3番機には茜がいた。
ピカピカに磨かれた機体はゆっくりと確実に進んでいく。カメラを持っていない人たちは大きくてを振ったり、声をかけている。
優弥はただじっとファインダー越しに茜を追い続けていた。
離陸滑走が始まり、ブルーインパルスは大空に向かって飛び立った。
いつ見ても感動する。その美しい編隊飛行に。
1番機から4番機は一度会場を離れ、会場正面から機体が向かってくる。白のスモークを出しながら、機体正面が会場に向く。
「相変わらず、かっこいいな」
シャッターを切る手を止めずに、優弥はぼそっと言った。
1つの技が披露される度に歓声がおこる。空に絵を描くように、技が次々と披露されていく。一体どれだけの訓練を積めば、あれだけ完璧な技になるか優弥にはわからない。
「3番機 2等空尉 神宮寺茜」
茜の名前がコールされる。機体は無事に着陸した。
コクピットからは茜が観客に向けて手を振っていた。ヘルメットで顔の表情はわからない。
長いようで短かった40分。
優弥はいつもよりも多くシャッターを切っていたように思った。
展示飛行が終わると、パイロットたちはサイン会に参加する。1番人気は隊長や飛行班長になるが、茜はその次に人気を博していた。
茜を遠目に何回か撮影してから、優弥は帰り支度を始める。
これで茜に会えるのは最後だ。
そう思うと、今ここで茜に告白したい気持ちが強くなる。だが、それは許されない。ブルーのパイロットは航空自衛隊の広報担当のようなものだ。そんな暴挙をすれば、出禁になりそうだし、ファンからも袋叩きにあうに違いない。
それならばと、優弥はメールを打つ。
『お疲れ様。フライト、かっこ良かった。話したいことがあるから、都合が良い時に連絡をください』
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