ファインダー越しの彼女

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 返信は思ったよりも早く、その日の18時に返ってきた。 『今から会えませんか?』  ホテルでくつろいでいた優弥は、慌てて身支度をしながら返信する。 『すぐ行く。どこで会う?』  指定されたのは駅前のホテルにある喫茶店だった。  優弥が泊まっているホテルの近くだ。財布とスマホをポケットに突っ込んで出ていこうとしたところで、優弥は足を止めた。すぐにカメラのSDカードを抜いて、何枚かスマホに保存する。  保存できたのを確認してから、優弥はホテルの部屋を出た。  外はすっかり暗くなっており、昼間よりも寒くなっていた。  走ってホテルの喫茶店に駆け込むと、そこには茜だけではなく、男も一緒だった。  なんとなく裏切られた気持ちになる。優弥はてっきり茜一人で来ているのかと思ったが、そうではなかったようだ。  男も自衛官だろうか。背筋が伸びていて姿勢が良い。顔も優弥よりも凛々しい。 「お待たせしました」  優弥が声をかけると、先に男が立ち上がった。  年齢は優弥よりも少し年上のように見える。パイロットだからか、体も鍛えぬかれているのが服の上からもわかる。 「柏木優弥さんですね?」  人懐っこそうな顔をした男は桜木と名乗り、同じブルーインパルスのパイロットだと言った。 「神宮寺、きちんと話をしてくるように」  そう茜に言うと、桜木は優弥に一礼をしてから店を出ていった。
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