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専門誌で茜を見つけてから、優弥はこれまで以上に航空祭に足繁く運ぶようになった。
一目でも彼女を見たい。
それは空自ファンだけではなく、メディアも同じようだった。
航空祭の会場アナウンスだけではなく、締めの写真撮影やサイン会も彼女の前には多くの人が並んでいた。機体にしか興味がなさそうな人も遠くから彼女を写真におさめている。
優弥は、茜がパイロットとして、ブルーインパルスに搭乗している写真を撮るまでは、茜だけを写真に撮ることはなかった。どうしてかはわからないが、なんとなく茜はコクピットに乗った方がより写真映えする気がした。
そうして遠くから茜を見つつ、1年が過ぎた。
いよいよ航空祭で初フライト。
天候は文句無しの快晴。優弥は会場近くに前泊して、朝一番から場所取りをした。望遠レンズを付け、ひたすら待つ。お昼ごはんやトイレの時は周りにいた顔見知りに頼み、場所を確保してもらっていた。
いよいよ、茜が大空に旅立つ。
今まで機体だけを撮ってきたが、その日はなぜかコクピットに座る茜の横顔を連写していた。
ファインダー越しに見た彼女の目は、鷲のように鋭く、凛々しかった。
この時、優弥は恋に落ちた。
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