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こぼれた告白に、優弥は手を口にあてた。今更そんなことをしても後の祭りだ。
「酔った勢いで言われても」
冷めた返事。優弥は頭を抱えたくなった。
当たり前だ。
茜は珍しい女性のファイターパイロット。しかも防衛大学校卒の幹部隊員。加えてそこそこの美人。
誰も放っておくことはないのは明白だ。
それなのに、こんな酔った冴えない合コン相手の告白を真に受けるはずはない。
「ごめん。信じてもらえないけど、酔った勢いじゃない。俺は君の瞳に恋をしたんだ」
ただ伝えたかった。
ブルーインパルスに乗った茜の鋭く、先を見る力強さに惹かれたことに。
そして、目が離せなくなっていることに。
「そっか」
肯定か、否定か判断がつかない茜の言葉に、優弥は顔を上げて、茜を見た。
茜は真っ赤な顔で優弥を見ていた。まるで誰かに初めて告白されたかのような、反応に優弥は驚いて何も言えなかった。
「も、もう大丈夫みたいなので、自分はこれで」
真っ赤な顔を手で隠しながら、茜は駅の方に歩き出そうとしたのを優弥は捕まえた。
「連絡先を交換しない?」
優弥の言葉に茜は驚いて振り返る。今度は困惑している。先ほどまでの真っ赤な顔はそこにはなかった。不審者を見るかのような目で茜は優弥を見た。
「なんでですか?」
冷ややかな声に、優弥は言葉を選びながら真剣に答える。
「君を知りたいから。そして、俺のことも知ってほしいから」
「知ってほしい?」
「俺は君のブルーでの活躍しか知らないし、君は俺のことをしらない。お互い知ることで先のステップに進めるか決められる。嫌になったら、ブロックすれば良いし」
茜はしばらく考えてから、優弥に言った。
「じゃあ、勝負ですね」
茜の言葉に、今度は優弥が困ることになった。一体何がどうなって、そういう発想になるか優弥にはわからなかった。
「どういう意味、ですか?」
「先のステップに進めるかどうかの勝負ですよね?」
茜のざっくりした説明で、自分が言った内容を思い出すが、間違ってはいない。
だけど、こんなマンガみたいな展開は想定してなかった。
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