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「勝利条件は、先のステップに進みたいなと思わせることができたら、でどうでしょうか?」
「どうでしょうって.....」
優弥はどう答えたら良いか悩んでいたが、茜は不敵に笑ったままだ。それがなんだか無性に悔しくなって、優弥は言う。
「その勝負受けて立つ。期限は」
「今日から1ヶ月」
「短くない?」
「あまり長くても、お互いに時間の無駄だったら困りますからね」
淡々としている茜の返事に優弥は一瞬戸惑ったが、ここを逃すと茜と連絡を取ることもなく、これまでのようにただ撮るだけになるのはわかっていた。
優弥はズボンの後ろポケットからスマホを取り出した。それを見た茜はハンドバッグからガラケーを取り出す。
「ガラケーか。珍しいね?」
「そうですか? あまり気にしたことないです。連絡取れれば良くてSNSもやってないです」
「まぁ確かに連絡取れれば良いもんな」
茜のアドレスを登録した優弥は、アドレスと電話番号をメールで送る。茜はテキパキと登録を済ませると、さっさとガラケーをバッグに戻した。
「すみません、時間ですので」
スマホで時間を確認すると、大分時間が経っていた。
「ごめん。時間とって」
「構いません。助けるのは普通ですから」
では、と茜は頭を軽く下げてからキビキビと歩き出そうとした。そこで、優弥は思い出したように茜の腕を掴んだ。
驚いたように茜は振り返って優弥を見る。
「呼び方、どうする?」
何を問われているのかわからなかったのか、茜は眉根を寄せた。
「あー、ほら、勝負相手だから、その、神宮寺さん? それともローズさん?」
優弥の問いでようやくわかったのか、茜は優弥にまっすぐ向き直り言った。
「茜、でお願いします」
「じゃあ俺は優弥で」
「了解です。では失礼します」
そう言い残すと、茜は踵を返して、足早に駅に向かって行ってしまった。優弥はスマホに表示された茜の連絡先をしばらく見てから、反対方向に向かって歩き出した。
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